ロシアによるウクライナ侵攻で、サイバー空間でも激烈な戦いが展開されている。サイバー攻撃能力が高いとされるロシアに対し、ウクライナは「IT軍」を創設して反撃。同国は国家として史上初めて、世界中のハッカーにもサイバー攻撃の協力を大々的に求めている。サイバー空間の戦いでは企業にも被害が出ており、日本にとって対岸の火事ではない。
強力なサイバー攻撃部隊を持つロシア軍に対抗するため、ウクライナは前代未聞の手を打った。
「IT軍を創設する。デジタル人材を求めている」。ロシアの侵攻開始2日後の2月26日、ウクライナのフョードロフ副首相兼デジタル転換相はツイッターでサイバー攻撃部隊の発足を宣言。さらに史上初めて戦争で国家がハッカーに広くサイバー攻撃を呼びかけた。
通信アプリ「テレグラム」に専用チャンネル「ウクライナIT軍」を開設。ロシアの政府機関や企業のURLを攻撃先として掲示する。〝IT義勇兵〟はそれを見て、短時間に大量のアクセスを集中させてサイトをダウンさせる「DDoS(ディードス)攻撃」を行う。フョードロフ氏はIT義勇兵が世界で31万人に上り、300件以上のDDoS攻撃を行ったことを明かしている。
ウクライナもロシアからとみられるサイバー攻撃を受け、今年に入って計6回の大規模攻撃があったとされる。2月15日の攻撃では、DDoS攻撃で軍や銀行などのシステムに障害が発生。フョードロフ氏は「少なくとも100万㌦(約1億2200万円)の損害が出た」とした。