昨年7月3日、静岡県熱海市伊豆山(いずさん)地区を襲った大規模土石流。その発生原因と指摘される不適切な盛り土造成の防止を図る新たな県盛り土規制条例が3月に成立し、7月1日に施行される。だが県が目指すのは盛り土規制のみならず、問題のある土地開発行為全般を全県でカバーする監視体制。部局横断の会議設置、デジタルの力も生かした情報共有システムや3次元マップなどで、「抜け道」のない体制を構築する狙いだ。
土地利用を一元管理
「(県内の)ほぼすべての開発行為に、何らかの規制がかかる。どういう開発行為がどこで行われているかを逐一、チェックする」
難波喬司副知事は、7月1日の運用開始を準備する新体制の意義をこう話す。
4月1日発足した「盛土対策課」が中心となる「県土地利用対策会議」には産業廃棄物、森林や農地の開発、都市計画など、さまざまな土地開発行為の許認可に関わる部局が参加。各部署が把握していた許認可、規制などの情報を土地取引段階から一元化して構築する「土地利用情報システム」で共有する。
問題の盛り土では、計画を大幅に逸脱する盛り土造成だけでなく、産廃混入、森林法抵触と、複合的な違反があった。土地開発には国の法律レベル、地方の条例レベルでさまざまな網が張られているが、逆に関係法令や部局が多岐にわたり「隙間」に入り込んでしまうことがあった。多角的な分析で問題の早期発見と対処を実現する考えだ。
3次元点群データ活用
新システムのうち、監視機能で特徴的なのが「3次元点群データ」の活用だ。
県は土石流発生翌日の7月4日、膨大な崩落土砂量を「約10万立方メートル」と推定し、盛り土が「被害を甚大化させたものと推定される」と言及。同月8日には、土石流前後の詳細な地形変動量を落とし込んだ3次元マップを公表した。
素早い分析を可能にしたのが、数十センチ単位で土地形状をデジタル情報化した点群データ。静岡県はドローンも使って先進的に平成28年から計測を進めている。書類や現地での目視、測量が頼りだった地形変化の把握が、異なる時期のデータを比べれば直ちに、客観的に分かることになる。
巡回監視班、県民から情報を受け付ける「盛土110番」の設置など、人の目による監視強化を図りつつ、土地開発データの一元化・共有化で「穴のない監視体制」に実効性を持たせる。