感染症の拡大など緊急時に開発されたワクチンや治療薬を速やかに使えるようにするための医薬品医療機器法(薬機法)改正案が31日、衆院本会議で審議入りした。改正案は臨床試験(治験)の最終結果前でも、有効性が推定されれば承認できる「緊急承認制度」の創設が柱。今国会での成立を目指す。
緊急承認制度は薬事承認を迅速化するのが狙い。新型コロナウイルスのワクチンや治療薬の実用化が、欧米よりも遅れた反省を踏まえた。岸田文雄首相は本会議で「国産のワクチンや治療薬の実用化を促す効果がある。申請に必要な臨床試験データが軽減され、日本での承認申請の促進に資する」と述べた。
緊急承認制度の適用対象はワクチンや治療薬だけではなく、国民の生命に重大な影響を及ぼす恐れがある病気の蔓延(まんえん)を防ぐために必要な医薬品や医療機器で、他に代替手段が存在しないことを条件とする。
承認の期限はおおむね2年とし、必要に応じて延長を可能とする。承認後、一定の期間までに有効性の確認を求め、確認できない場合は承認を取り消す。安全性は従来と同じ水準の確認を求めることを前提とし、健康被害が発生した場合は、既存の救済制度の対象とする。
現行制度には、海外の薬事当局が認めた医薬品を早期に承認する「特例承認制度」があるが、日本人への有効性や安全性を確認するため、国内で治験を行わなければならないという課題があった。「条件付き早期承認制度」もあるが、患者数の少ない「希少疾病用医薬品」などが対象で緊急時を想定した制度ではない。
改正案は、医師らが電子処方箋の交付を可能とする医師法改正案などの関連法案をまとめた「束ね法案」として提出された。