記者発

民主VS権威…最前線の日本 経済部・田辺裕晶

産経ニュース
ウクライナ南東部マリウポリ郊外を走行する、ロシア側のものとみられる戦車=20日(ロイター=共同)
ウクライナ南東部マリウポリ郊外を走行する、ロシア側のものとみられる戦車=20日(ロイター=共同)

11月上旬とは思えぬ寒さと鈍(にび)色の空の下、赤の広場は雪に煙っていた。お菓子の家のようなタマネギ屋根の聖ワシリー寺院を眺めつつ、日露両国の往来が増え日本人でにぎわう広場の様子を夢想した。2016年秋、日本とロシアの経済協力交渉を取材しにモスクワへ行った際のことだ。

経済協力をテコに北方領土問題を含む平和条約締結交渉を動かしたい日本側の思惑に乗じ、ロシアはサハリン(樺太)と北海道の間でのガスパイプラインや送電線の敷設、シベリア鉄道を北海道に延伸し極東の日本と欧州の玄関口にあるモスクワとを路線で結ぶといった壮大なプロジェクトをいくつも提案していた。

そのほとんどはお蔵入りとなったが、東日本大震災で電力需給が逼迫(ひっぱく)した直後とあって、エネルギー供給を多角化する経済協力には「歴史的交渉」(経済産業省幹部)と日本でも好意的な声があった。

あれから5年半、世界はロシアの暴挙に揺れている。隣国のウクライナは戦車に蹂躙(じゅうりん)され、パイプラインで天然ガスの4割をロシアに依存した欧州経済は大打撃を受けた。

日露の経済協力が順調に進み、両国が〝地続き〟になっていたら何が起きたか。恐らくロシアは、日本に対しても欧州と同様にエネルギーを人質に取って脅しをかけただろう。シベリア鉄道を利用した侵攻の脅威すら笑い話では済まなくなったかもしれない。

まさか21世紀に大規模な侵略戦争など起きるはずがないという思い込みが警戒心をまひさせていたのだろうか。14年にはロシアがウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合していたにもかかわらず、まるで人ごとのようだった。

ロシアは日米欧の制裁に反発し条約交渉の中断を発表した。よい機会だ。甘言に乗せられ金づるになっただけにも見える一連の交渉の妥当性を検証すべきだろう。萩生田光一経済産業相が兼務するロシア経済分野協力担当相のポストも見直すべきではないか。

覇権への野心を隠さない中国が虎視眈々(たんたん)と台湾併合を狙う中、有事になれば尖閣諸島(沖縄県石垣市)を含む日本の領土に飛び火するだろう。われわれは既に民主主義と権威主義との戦いの最前線にいる。ウクライナ危機は、平和ボケが続くこの国に警鐘を鳴らしている。

【プロフィル】田辺裕晶

平成13年入社。前橋支局、宇都宮支局、東京本社文化部を経て、21年から経済部。現在は財務省・日銀・兜クラブを中心に財政金融分野の統括キャップ。

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