菅政権後の「携帯料金引き下げ」 大手競争ひと段落、新たな課題も

そこで総務省が現在、力を入れているのが、そうした古いプランを契約している人を新しいプランに移行させることだ。とりわけ2019年の電気通信事業法改正以降に提供された料金プランは、途中で解約すると高額な違約金が請求される、いわゆる「2年縛り」などの制約がほとんどなく安価な料金プランに乗り換えやすくなっていることから、総務省は携帯各社に対し、契約者が法改正後のプランに移行しやすくする施策を求めてきた。

菅首相の総選挙不出馬を報じる街頭のテレビを見る人=2021年9月3日、東京都千代田区(肩書は当時)
菅首相の総選挙不出馬を報じる街頭のテレビを見る人=2021年9月3日、東京都千代田区(肩書は当時)

携帯各社もそれに応える形で古い料金プランの違約金を撤廃したり、他社に乗り換える際の障壁とされてきた端末購入プログラムの条件を変更したりするなどの策を打ち出しており、2022年4月には各社ともに移行しやすい環境が整うようだ。ただ新しい料金プランへの移行は消費者が自ら行動を起こさなければ進まないだけに、今後は消費者に対し、いかに携帯電話料金に関心を持ってもらい、具体的な行動を促すかという取り組みが必要になってくるだろう。

そしてもう1つ、大きな課題となっているのがMVNO(仮想移動体通信事業者)の競争力向上である。MVNOは携帯電話会社からネットワークを借りてモバイル通信サービスを提供する事業者であり、サービスは最小限で通信量も少ないが、価格が非常に安いサービスが多いことから「格安スマホ」「格安SIM」などの名称でも知られている。

そのMVNOはこれまで低価格を武器として、携帯大手の料金が高いことに不満を抱いていた人達を獲得して成長してきた。だが菅前政権の圧力によって、携帯大手の側がMVNOに匹敵する低価格プランを直接提供するようになったことで、大手からMVNOに流出する人が大幅に減ってしまったのである。

それに加えて楽天モバイルが、1GB以下であれば月額0円で利用できる「Rakuten UN-LIMIT VI」を、KDDIも月額0円から利用できるオンライン専用の料金プラン「povo 2.0」の提供を開始。従来MVNOを選んでいたスマートフォンにとても詳しい人達が、“0円”を求めてそれらプランに流れてしまったことも、MVNOにとって大きなマイナスに働いているようだ。

そうした携帯電話会社の低価格攻勢に「とても対抗できない」と強い危機を抱いたMVNOの業界団体であるテレコムサービス協会MVNO委員会は、2021年1月に総務省に要望書を提出。携帯各社からネットワークを借りる料金の大幅な引き下げなど、競争を維持するための緊急措置を求めるに至っている。

その結果、MVNOが携帯各社からネットワークを借りる料金が大幅に安くなり、それを生かしてMVNO側は一層低価格の料金プランを提供することで、かろうじて競争力を維持することはできた。だが一連の料金引き下げの結果、MVNOの主力プランの料金は月額1000円を下回る水準にまで下がっており、ビジネス環境は大幅に悪化している。

それに加えてMVNOは携帯各社より企業体力が弱く、知名度やサービス内容などの面で不利な立場にあることは変わっておらず、非常に厳しい立場に立たされているのが現状だ。これまで料金の引き下げをけん引してきたMVNOが、携帯各社の低価格プラン攻勢で競争力を失えば、携帯4社の寡占が進み競争が失われることでサービス内容の硬直化、さらに将来的には再び料金が値上げされる可能性も出てくるだろう。

そうしたことから総務省では現在、携帯各社が提供するプランの料金が、MVNOに貸し出す料金と比べ不当に安くないかどうかを検証する「スタックテスト」の実施に向けた議論が進められている。ただ携帯各社の低価格プランが消費者から好評を得ていることもまた事実であり、正当性を厳しく検証した結果、そうしたプランが姿を消してしまうようであれば消費者から反発も出てくる可能性もある。今後、総務省には難しい判断が求められることになりそうだ。

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