菅政権後の「携帯料金引き下げ」 大手競争ひと段落、新たな課題も

SankeiBiz

携帯電話料金引き下げにとても熱心だった菅義偉前首相の政権下にあった2021年、NTTドコモの「ahamo」に代表される、従来の携帯電話料金プランより大幅に安い料金プランが相次いでスタートした。激しい料金競争が繰り広げられ、日本の携帯電話料金が劇的に安くなったことは記憶に新しいことだろう。

新料金プラン「ahamo(アハモ)」を発表するNTTドコモの井伊基之社長(右)ら=2021年3月、東京都渋谷区
新料金プラン「ahamo(アハモ)」を発表するNTTドコモの井伊基之社長(右)ら=2021年3月、東京都渋谷区

では、その菅氏が退任し、現在の首相である岸田文雄氏の政権に移っている2022年、その料金競争はどうなったのか?というと、ひと言で言えば「落ち着いた」ということになる。実際、2022年1月から2月にかけて実施された携帯4社グループの決算説明会を見ても、「各キャリアとも一息ついている感じがある」(KDDI代表取締役社長の高橋誠氏)、「競争は一息ついていると思う」(NTT代表取締役社長の澤田純氏)など、各社のトップからは料金競争がひと段落したとの発言が相次いでいた。

その理由の1つは料金引き下げの明確な成果が出ていることだ。実際、ICT総研が2022年1月24日に発表した「2022年1月 スマートフォン料金と通信品質の海外比較に関する調査」によると、一連の料金引き下げによって東京の携帯電話料金が世界の主要都市で最も安いという結果が出ており、菅氏が問題視してきた「日本の携帯料金が世界的に高い」という状況は既に改善されている。

そしてもう1つ、より大きな理由となるのはやはり首相交代であろう。一連の料金引き下げは、業界の監督官庁でもある総務省とのつながりが深かった菅前首相による非常に強いプレッシャーが大きく影響していただけに、菅氏が政権を離れ総務省、ひいては携帯電話業界に与える影響力が大幅に弱まった現在、携帯各社が業績を大幅に悪化させてまで、料金競争を続ける理由に乏しくなっている。

しかも岸田政権に代わって以降は、新たに地方からデジタルの実装を進めて都市との差を縮める「デジタル田園都市構想」が打ち出され、携帯各社にも地方での5Gネットワーク整備を加速することが求められたのだが、そのためには資金が必要だ。それゆえ、もし政権側がこれ以上の料金引き下げを求めてくるようであれば、5Gの整備に大幅な遅れが生じ地方のデジタル化の大幅な遅れ、さらには日本の国際競争力低下につながってくる可能性もあるだろう。

MVNO衰退で再値上げの懸念

料金引き下げ競争が落ち着いたというのは消費者からして見れば残念なことかもしれないが、日本の携帯電話業界の今後を考えれば妥当なことでもあるわけだ。ただ、ここ最近、総務省で実施されている有識者会議などを見ていると、携帯電話料金を巡っては引き続きいくつかの課題を抱えているように感じる。

その1つは、安価な新料金プランに乗り換えていない人がまだたくさんいることだ。携帯電話料金が安くなったとはいえ、実は携帯電話料金の見直しに積極的な人がそれほど多いわけではなく、「高い」と言いながらこれまで契約している料金プランを見直すことなく使い続けている人は意外と多いのである。

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