宮城、福島両県で最大震度6強を観測した地震から23日で1週間。福島駅(福島市)と槻木駅(宮城県柴田町)を結ぶ阿武隈急行では、ホームや橋脚の損傷などが相次いで見つかり、全線で運休が続いている。被害状況の確認を続けているが、いまだ全容は分かっておらず、復旧の見通しも立っていない。(芹沢伸生)
阿武隈急行は官民共同の第三セクターで、全長54・9キロ。通勤や通学の利用者が多く、運休が市民生活に与える影響は大きい。令和元年10月の台風19号では、駅のホームが流失するなどして全線復旧までに約1年を費やし、約11億円の被害があった。昨年2月の福島県沖地震でも線路などが損傷、被害額は約9000万円に及んでいる。
今回の地震で阿武隈急行沿線は震度5強~震度6弱の揺れに襲われ、被害は全区間で確認されている。これまでに線路や電柱、駅のホーム、橋梁(きょうりょう)など被害を受けた場所の把握は、ほぼ終了。現在は土木や電気など各部門の専門家が、損傷の程度を見極める作業を進めている。
福島学院前駅(福島市)では、ホームの一部が30センチほど線路側にずれ、レールも波を打った。長さ353メートルの第1阿武隈川橋梁(同市)は橋脚4本のうち3本に亀裂が見つかった。同社の岩本正男業務部長は「そのうち1本は被害が比較的大きいと思う」と話す。
このほか、線路に敷く道床と呼ばれる砕石が崩れたり、電気設備のコンクリート製の柱が傾くなどの被害も複数、確認されている。同社企画営業課では「運転士などの乗務員も復旧作業に当たっている。被害は昨年2月の福島県沖地震よりはるかに大きい」(長沢英貴課長)という。
新型コロナウイルスの影響で収入が落ちていただけに、沿線に桜の名所が多い同社では、春の観光需要に期待が高まっていた。長沢課長は「新型コロナで一時、6割減だった利用者が3割減まで戻ったところで今回の地震。春の観光シーズンの独自企画は全部ダメになった」と肩を落とした。