【カイロ=佐藤貴生】ロシアのウクライナ侵攻を受け、両国に小麦の輸入の約8割を依存するエジプトで通貨価値が急落している。ロイター通信は22日、事実上の通貨切り下げであり、国際通貨基金(IMF)の支援を受ける準備だと伝えた。ロシアとウクライナは世界有数の農産物の輸出国で、国際的な食料不足への懸念が広がっている。
2020年11月から1ドル=15・7前後で推移していたエジプト・ポンドは21日、1ドル=18・3まで値を下げ、22日も下落傾向がみられた。
人口が1億人を超えるエジプトは世界最大の小麦輸入国で、地元メディアは今月中旬、ロシアのウクライナ侵攻を背景にパンの値段が上昇し始めたと報じた。シーシー大統領は最近、食料の確保と価格安定を図るよう相次いで指示を出していた。
世界トップの小麦輸出国のロシアと5位のウクライナとの戦争は、世界の食料供給に大きな影響を与える恐れがある。
世界食糧計画(WFP)当局者は18日、露軍の爆撃でウクライナの橋や列車など食料のサプライチェーンが壊滅的打撃を受けたと述べた。ロシア軍がウクライナの穀物輸出拠点である黒海へのアクセスを封じるように南部一帯で攻勢を強めていることも、食料不安に拍車をかけている。
20日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、ロシアのウクライナ侵攻後、小麦は21%、大麦は33%、肥料は40%それぞれ値上がりした。ロシアとベラルーシは世界屈指の肥料製造国で、将来にわたって食料不足が続きかねない気配となっている。