SNSなどインターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策として、政府は「侮辱罪」を厳罰化する刑法改正案を国会に提出した。法定刑に懲役刑を追加し、公訴時効も延長されるが、中傷と批判の線引きや、過去の投稿に対する扱いはどうなるのか。専門家に聞いた。
東京・池袋の乗用車暴走事故で妻子を亡くした松永拓也さん(35)がSNSでの匿名アカウントからの投稿で誹謗中傷を受けたとして、警視庁が侮辱容疑で愛知県の20代の男性を任意で事情聴取した。関与を認めているという。11日に松永さんのツイッター投稿に対し、匿名アカウントから「金や反響目当てで闘っているようにしか見えませんでした」などと書き込みがあった。
侮辱罪の現行の法定刑は「拘留(30日未満)か科料(1万円未満)」だが、8日に閣議決定された改正案では「1年以下の懲役・禁錮または30万円以下の罰金」を追加。公訴時効も1年から3年に延びる。6月15日が会期末の今国会で可決されれば、周知期間を経て、7月までに施行される見通しだ。
改正法について弁護士の高橋裕樹氏は「ネットの場合、施行日以降に投稿されたものが適用範囲となる。侮辱の範囲が広がったわけではなく、刑罰が重くなったという点を理解しておきたい」と話す。