ロシア軍が、ウクライナの首都キエフに近づいている。米国防総省高官は11日までに、北東部からの部隊が市中心部から約15キロにまで前進したとの分析を明らかにした。中東からの志願兵も募り、総攻撃が近いとの見方もある。ただ、ウラジーミル・プーチン大統領が当初想定していた「短期間での電撃作戦」は完全に失敗した。相次ぐ国際法違反に加え、子供や女性を含む民間人にも多数の犠牲者が出ており、「ロシア=国際社会の敵」となった。1日2兆円以上という巨額戦費と、ロシア経済を直撃する経済制裁。産経新聞論説副委員長の佐々木類氏は、軍事力でキエフを陥落させても、「ロシアの勝利はあり得ない」「ロシア国民は塗炭の苦しみを味わう」と喝破した。
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キエフに迫るロシア軍だが、「国民の生命と財産」「祖国の独立」を守ろうとするウクライナ軍の激しい抵抗に遭い、プーチン氏が目指した「短期決戦によるウクライナ全土の制圧」は失敗に終わった。
侵攻開始(2月24日)当初は、専門家の「数日間でキエフは陥落する」との観測もあった。だが、ロシア軍の進撃速度は、第2次世界大戦の独ソ戦で、ドイツ陸軍機甲師団が見せた電撃作戦とは程遠い遅々としたものだった。
その理由について、吉田圭秀陸上幕僚長は10日の会見で、「ロシア軍が制空権を掌握しない中で、(ウクライナを)多方面から侵攻したのは、短期決戦を想定していたからだ」とし、今後のロシア軍の展開については「後方支援に非常に大きな問題がある」との見方を示した。