政府主催の追悼式が開催されなくなった今年の「3・11」。岩手、宮城、福島の被災地では、海岸や追悼施設などで式典などが行われ、人々が祈りをささげた。
岩手県
1233人が犠牲になった岩手県大槌町では、午後2時46分に防災サイレンが鳴り響いた。町役場では県と町の合同追悼式が開かれ、米国のラーム・エマニュエル駐日大使も出席する中、遺族ら約150人が黙禱(もくとう)した。
妻と母を亡くした遺族代表の芳賀俊明さん(69)は「妻と2人の時間を大切にすればよかった。療養中の母も快方に向かっていた」と振り返り、「11年たった今でも、後悔と寂しさがこみ上げる」と思いを語った。
同町の御社地(おしゃち)公園では地元のNPOや社会福祉協議会が犠牲者を悼んでろうそくに点灯する追悼イベントを開催。数百本のLEDとろうそくで「3・11」の文字を浮かび上がらせた。
運営に携わった黒沢りえ子さん(66)は60代のいとこの女性を津波で亡くした。11年経っても「忘れないでほしい」と訴えた上で、「これからはみんな、前を向いて歩きたい」と話した。
宮城県
津波で700人以上が犠牲になった宮城県名取市閖上(ゆりあげ)の「名取市震災メモリアル公園」にある慰霊碑では追悼の献花が行われた。
「真っ黒で壁のような津波の光景は今でも思い出す。もう二度と起こってほしくない」。姉とともに献花に訪れた森友子さん(66)は、亡くなった母のさだめさん=当時(91)=の名前が刻まれた名簿の前で目頭を押さえた。
近くの伝承施設「閖上の記憶」の前では「追悼のつどい」が行われ、メッセージを書いた約300個の「ハト風船」を空に飛ばした。