東日本大震災の発生から11日で11年となるのを機に、福島県の内堀雅雄知事が産経新聞のインタビューに応じた。詳細は次の通り。
--震災と東京電力福島第1原発事故から11年。
「帰還困難区域を除き面的除染が完了し、避難指示区域が大幅縮小した。拠点施設整備やインフラ復旧も進み、県産品が国内外で高評価を受けるなど復興は着実に前進した。国内外の支援と県民の懸命な努力でここまできた。感謝を申し上げたい」
--風化の懸念もある。
「新型コロナウイルス禍で2年間、情報発信に制限がかかり中止になったものもあった。オンラインなどで対応しても、リアルとは大きく違う。現場で直接訴える機会が失われているのは復興、風評払拭、風化抑制にとって大きなマイナスだ。情報発信を感染対策と両立し、できるだけリアルで行いたい」
--復興の課題は。
「今も3万3千人超が避難生活を続けている。生活再建、廃炉や汚染水・処理水対策、風評と風化、急激な人口減少…。復興が進み顕在化するものもある。最大の課題は避難地域の復興再生。新たな活力を呼び込み、にぎわいを創出したい。ふくしま12市町村移住支援センターを中心に国、県、地元とで受け入れ体制を強化している。また、復興の進捗(しんちょく)に応じた生活再建支援などきめ細かな施策や、新産業創出などを進める」
--全町避難が続く双葉町で避難解除に向けた動きが活発化している。
「特定復興再生拠点区域の避難指示解除に向け準備宿泊が始まった。産業団地や産業交流センターを整備し、東日本大震災・原子力災害伝承館と連携を図り、新たな人の流れを作った。営農再開に向け野菜の試験栽培などにも取り組んでいる。引き続き国や町と連携し、安心して暮らせる環境を整備する」
--処理水の海洋放出準備が進む中、安全性や風評への懸念は根強い。
「安全面は関係市町村や専門家の意見を聞き、しっかり確認する。新たな風評や、陸上保管継続で復興や帰還への影響を危惧する声など、意見はさまざま。国の行動計画では国内外への情報発信、農林水産業、観光業に対する策が示された。行動計画の実施状況を確認し、追加対策や支援内容の見直しを含め、必要な対策は国に求める」
--被災12年目に入る。
「避難している方を取り巻く状況や課題は個別化、複雑化している。さまざまな思いや葛藤を受け止め、国に実情を伝え、最後まで責任を持って復興に取り組むよう強く訴えていく」(芹沢伸生、写真も)