ウクライナは他山の石 棍棒手放した大失敗 鹿間孝一

産経ニュース
1日、ミサイル攻撃を受けた州庁舎付近=ウクライナ東部ハリコフ(ロイター)
1日、ミサイル攻撃を受けた州庁舎付近=ウクライナ東部ハリコフ(ロイター)

英語で3月をMarch(マーチ)と呼ぶのは、ローマ神話の軍神で農耕の神でもあったMars(マルス)に由来する。古代ローマ暦では3月が新年だった。冬が終わって農作業を始めると同時に、領土を拡大するために軍事行動に出る時期でもあった。

ロシアは3月を待たずにウクライナに侵攻した。春になると凍てついた大地がぬかるみ、戦車が進む妨げになるからだ。親露派武装勢力が支配する2地域の独立を承認し、住民を保護するためというのも、使い古された口実である。

国際社会から非難を浴び、悪役として孤立することになっても、プーチン大統領はおかまいなしだ。欧米諸国はロシアという国を見誤ったのではないか。

「坂の上の雲」や「菜の花の沖」でロシアとは何かを考えた司馬遼太郎さんは「ロシアについて―北方の原形」(文春文庫)にこう書いている。

〈ロシア人によるロシア国家の決定的な成立は、わずか十五、六世紀にすぎないのです。若いぶんだけ、国家としてたけだけしい野性をもっているといえます。〉

それ以前は、東方からの遊牧民族、騎馬民族に征服、支配され続けた。

〈外敵を異様におそれるだけでなく、病的な外国への猜疑心、そして潜在的な征服欲、また火器への異常信仰、それらすべてが支配と被支配の文化遺伝と思えなくはないのです。〉

帝政以来のロシアは、膨張した領土と多くの異民族を、歴史的に独裁政治によって統治してきた。絶対君主制のロマノフ王朝しかり、共産党独裁のソ連しかり。それを支えた強大な軍事力は、外国への示威であるとともに、国内、連邦内を畏怖させた。冷戦時代の大国再興を夢見るプーチン大統領も力の支配を信奉している。

日露戦争で講和の調停役を務めた米国のセオドア・ルーズベルト元大統領は「棍棒(こんぼう)外交」で知られる。「太い棍棒を持ち、穏やかに話す」。ところが、バイデン米大統領は軍事介入はしないと明言してしまった。経済制裁をちらつかせても、棍棒を持たなければ侮られる。大失敗だった。

短期決着をもくろんだプーチン大統領には、ウクライナ側の抵抗は誤算だろう。焦りからか核兵器の使用までほのめかす。停戦交渉は隔たりが大きく、予断を許さない。

隣国の非道は、日本にとっても人ごとではない。憲法前文の「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」では「われらの安全と生存を保持」できない。

しかま・こういち 昭和26年生まれ。社会部遊軍記者が長く、社会部長、編集長、日本工業新聞社専務などを歴任。特別記者兼論説委員として8年7カ月にわたって夕刊1面コラム「湊町365」(産経ニュースでは「浪速風」)を執筆した。

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