政府が国連総会緊急特別会合での対ロシア非難決議採択に向け、東南アジア諸国連合(ASEAN)各国への働きかけを強めている。2月28日には林芳正外相がASEAN各国の駐日大使らを外務省に招いたほか、3月1日には岸田文雄首相がラオスのパンカム首相と電話会談した。先進7カ国(G7)の一員として、ウクライナ侵攻を続けるロシアに対する厳しい国際世論づくりに向け、水面下でも説得を続けている。
首相はパンカム氏との電話会談で、ウクライナの主権・領土の一体性を明確に支持する姿勢を示すことへの期待を表明した。ラオスは社会主義国家で、旧ソ連時代から装備面など軍事協力の歴史があり、ラオスを説得できれば一定の意義がある。
米国を中心としたG7各国が現地時間の2日にも採択を目指す国連総会決議に法的拘束力はない。しかし、外務省幹部は「法的拘束力のない紙切れ1枚といえども、どれだけの支持を得られるかで重みは違う」と話す。
2014年にロシアがウクライナ南部クリミアを併合した際も決議が採択されたが、その際は賛成が100カ国にとどまった。今回は前回以上の賛成獲得を狙う。欧州各国は旧植民地のアフリカ諸国を中心に説得外交を展開しており、日本は関係が深いASEAN各国を中心に協議している。
もっとも、ロシアに対するASEANの態度は一様ではない。2月26日のASEAN外相声明では、ウクライナ情勢に関して「深い懸念」を示したが、「ロシア」の文言は盛り込まれなかった。ベトナムなどもラオスと同様にロシアと歴史的なつながりがある。政府は在京の大使館だけでなく、各国に置く大使館も通じて個別の働きかけを強めている。(大橋拓史)