記録的大雨や台風などによる大規模災害が各地で相次ぐ中、重機を保有する全国の事業者が災害復旧の連携を進める一般社団法人「被災地復旧支援重機ネットワーク」を設立し、その中心的な役割を山梨県の企業が担う。このほど山梨県と同ネットワークが災害復旧支援で画期的な協定を結んだ。県内の災害だけでなく他の都道府県から山梨県に協力要請があった場合にも復旧支援に参加できるというものだ。
重機でも力を加減
山梨県笛吹市下黒駒。国道137号沿いの鈴健興業(鈴木康修社長)の本社敷地で、県や国、警察、消防、自衛隊などの関係が見守る中、土砂災害で家屋ごと生き埋めになった家人を救助する訓練のデモンストレーションが行われた。
まず通常の重機で、土砂や岩、家屋のトタンや木材などを除去。その後、大型のはさみの先端に専用のアタッチメントをつけた油圧ショベルで、屋根や柱やはり、倒れた家具などを慎重に取り除いていく。布団に入った人に見立てた人形が見つかり、その後は人手で無事に救出することができた。
被災者がいる環境でも、重機で作業できるのは鈴健の特許技術による。一般的なアタッチメントは力の加減が難しく、べニア板を挟むとバキバキと割ってしまい被災者を傷つける可能性がある。しかし、鈴健の専用アタッチメントは力の加減が容易で、小さいものや柔らかないものも壊さずに取り出すことができる。
被災地では、倒壊家屋に閉じ込められた被災者救助のため、重機は使わず、消防、警察、自衛隊員らが人力で土砂やがれきを除去するところから始めねばならない。このアタッチメントを装着した重機を使えば、今まで人手に頼るしかなかった作業も可能になり「作業効率を一気に引き上げることが可能」(鈴建担当者)になる。
実績ある8社連携
同ネットワークは、鈴健や北海道から九州までの建設業や解体業など、建機や重機を日常的に使っている8社が中心となって、令和2年11月に発足した。東日本大震災や令和元年の台風19号や2年の熊本豪雨などの災害現場でがれき処理を手掛けた実績を持つ事業者も多い。