「今日もいるのかよー、働く気になったかよー。お前、親とは縁切れてるのかー? 親が今のお前の姿を見たら、きっと泣くだろうなー」
上野駅正面玄関口の前にある通路に段ボールを敷いて眠っている私に、今日も手配師の京太郎が話し掛けてくる。手配師の仕事は、私のような見るからに金に困っているような男を街から探し出し、肉体労働などの現場に斡旋することだ。
京太郎はプロである。ホームレスに「働け」と上から命令などすれば、敵対心が生まれるだけで彼の懐は潤わない。いかにして人を「惨めな気持ち」にさせるか。彼はこの能力に関してはズバ抜けている。
敷布団の上であぐらをかき、さっさとどこかに消えてくれないかと京太郎のことをうかがっていると、外国人のボランティア団体がやってきては、ホームレスたちに食料を配り始めた。
「お、俺はホームレスじゃないからそんなものいらねーよー」