新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、国公立大の2次試験が25日、始まった。1月の大学入学共通テストでは、受験生らが刺傷される事件が起きており、国の要請を受け、各大学が警備を強化。さらに試験中の問題流出も発覚したことで、不正行為に対する監視も徹底された。想定外の同時多発的なトラブルが、受験生や入試関係者らを翻弄する。
保護者不安
25日午前8時、東京都文京区の東京大本郷キャンパス正門。多くの警察官が警戒に当たるなか、受験生らは構内へと入っていった。
正門付近には、保護者の姿も目立つ。長女(18)に付き添ってきたという千葉市の女性(52)は「共通テストでは受験生が刺される事件が起きたので、念のため一緒に来た」と話した。
共通テスト初日の1月15日、本郷キャンパス正門から約400メートル北の「農正門」前の路上で、名古屋市の私立高2年の少年に受験生らが包丁で刺される事件が発生。「前例のない事態」(文部科学省幹部)を踏まえて、文科省は各大学に2次試験でも警備体制の徹底を要請する事態になった。
さらに、今回の共通テストでは受験生による試験中の問題流出も発覚。大阪府の女子大学生が上着の袖に隠したスマートフォンで問題文を撮影し、インターネットを通じて東大生らに解答を依頼したとされており、各大学は不正行為への監視徹底も迫られた。
この日、都内の国公立大の入試に臨んだ都内の私立高3年の女子生徒(18)は「コロナ感染だけでも大変なのに、事件に巻き込まれないかという不安もある。ただ、それを言い訳にはできないので、全てを出し切りたい」と語った。
横浜市金沢区にある横浜市立大でも、神奈川県警と協議して正門周辺や最寄り駅の警戒を強化。受験生が持つ電子機器の状態をチェックするなど不正行為防止に努めることを職員間で確認し合ったという。
広報担当者は「コロナ感染対策に加え、同時多発的に起きた想定外の事態に対応することになった。入試は大学にとって最重要イベントの一つなので万全を期したい」と力を込めた。
積極的な出願
文科省によると、国公立大2次試験の確定志願者数は、前・中・後期合わせて172大学594学部に昨年より3242人多い42万8657人。募集人数に対する倍率は昨年と同じ4・3倍だった。
大手予備校の河合塾は「今年は共通テストの平均点が大きくダウンし、国公立大をあきらめる受験生の増加が懸念されたが、難関大に積極的に出願する姿勢が見られた」と分析する。学部別では就職を意識した動向となっており、特に医、薬、獣医など難関資格系の学部が人気だという。
今回はコロナ禍で2度目となる受験シーズンで、大学側は感染防止に厳戒態勢を敷く。専門家からは、新規感染者数が2月上旬にピークを越えたとの見方も示されているものの、受験生がいる家庭では「家族一丸となって感染リスクを減らせるように注意を払っている」(保護者)という声も多く、ナーバスな状況が続いている。
新型コロナの感染者や濃厚接触者となり共通テストを本試験と追試験のいずれも受けられなかった受験生の救済策として、文科省は2次試験などの個別試験のみで合否判定を行うように大学側に要請。21日時点で全国の国公私立17大学に延べ22人から相談があり、全員に救済策が実施される見通しとなっている。