再エネ×蓄電池で「ゼロカーボンシティ」 佐賀

産経ニュース
佐賀県・小城市役所駐車場の屋根に設置された太陽光パネル(中村雅和撮影)
佐賀県・小城市役所駐車場の屋根に設置された太陽光パネル(中村雅和撮影)

佐賀県小城市役所に再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせて使用電力をまかなう新システムが完成し23日、竣工(しゅんこう)式が開かれた。災害時の業務継続能力の確保と、脱炭素社会の実現につながる再エネ導入拡大の両立を図る取り組みで、江里口秀次(えりぐち・しゅうじ)市長は「ゼロカーボンシティ」を宣言した。全国的な先進事例として注目を集めそうだ。(中村雅和)

新システムは、職員駐車場の屋根などに設置した太陽光パネル(合計出力500キロワット)と大容量の鉛蓄電池を組み合わせた。昼間帯に発電した電気を蓄電池に充電し、順次使用する。蓄電池は庁舎全体に72時間の給電が可能な容量(3456キロワット時)を確保する。災害時に避難所となる隣接の保健福祉センターにも送電し、運営に役立てる。

大規模災害で市庁舎など公共施設への送電がストップすると、人命救助や行方不明者の捜索活動にも支障が生じる。令和元年9月の台風15号では送電塔や電柱が倒壊し、各家庭だけでなく、公共施設でも長期間の停電が発生した。

このため内閣府は、各自治体が72時間以上の稼働が可能な非常用電源を確保することが望ましいとの指針を打ち出す。同時に、近年の災害激甚化を受け電源や燃料の確保・拡充を求めているが、予算や設置場所などの制約があり、なかなか進んでいないのが実情だ。

小城市の取り組みは、蓄電池を活用し平時、有事の境目なく電力を確保するものといえ、江里口氏は「全国的にも先駆的な事例だ」と胸を張る。

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佐賀県・小城市役所に電力を供給する鉛蓄電池(中村雅和撮影)

新システムは、脱炭素社会の実現に向けた取り組みも担う。太陽光パネルと蓄電池を組みあわせているため、発電時の温室効果ガス排出はゼロだ。加えて、マイクログリッドと呼ばれる小規模な送電網を構築し、火力発電など温室効果ガスを排出する電源由来の電気も流れる既存送電網から切り離したことで、二酸化炭素排出量を1年間で約360トン削減できると見込む。

ただ、これは技術的に簡単なことではない。

電力システムは、必要とされる瞬間に必要とされる量を発電する「同時同量」が基本だ。それは九州全体といった大規模な送電網でも、マイクログリッドでも変わらない。小城市のケースなら、市庁舎で使用する電力(需要)に応じて、蓄電池からの供給をリアルタイムに制御しなければ需給バランスが崩れ、障害につながる。この制御を可能にしたシステムは、九電工などが開発と施工を担った。

九電工は平成27年、長崎県佐世保市のリゾート施設「ハウステンボス」内にある別荘地で、太陽光と風力を組み合わせたマイクログリッドを構築する実証に着手。29年にはインドネシアの離島、スンバ島内で太陽光発電と鉛蓄電池を組み合わせ送電網に安定的な電力を供給するシステムを導入するなど、技術の蓄積を着々と進めてきた。

天候など自然環境に発電量が左右されるという再エネの弱点を蓄電池で補い、既存の送電網に頼らずに安定した電力を供給できる今回のシステムには、これらの裏付けがある。

九電工技術本部国際事業部の松村敏明担当部長は「スンバ島などでの経験を踏まえ、蓄電池の長寿命化などを実現させた。今後もコスト削減などの余地はあるが、温室効果ガス削減効果は大きく、可能性のある技術だ」と説明する。

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小城市は新システム導入に伴う既存送電網からの離脱で、年間約1千万円の電気料金が不要になると見込む。これは電力会社にとって短期的には収益機会の損失といえる。

しかし、脱炭素社会の実現に向けた取り組みという点や、既存の送電網維持に大きなコストが必要な僻地(へきち)・離島での選択肢になりうることを考えれば、電力各社にとってもメリットがある試みだ。九州電力の池辺和弘社長も「再エネと蓄電池を組み合わせて自己完結した形で温室効果ガスの排出量を減らすことは大切だ」と強調している。

ただ、同様のシステムを普及させるうえで越えるべきハードルは多い。一つはコストだ。今回、約8億6千万円の事業費のうち約2億9千万円は環境省の補助を受けた。関係者は「財政上の支援などがなければ、費用面から導入は難しい」と打ち明ける。加えて、電力需要に応じた細やかな調整など技術面でも改良の余地はあるという。

とはいえ、再エネと蓄電池を組み合わせることで、誇張ではなく、文字通りの「エネルギーの地産地消」が実現されたことは確かだ。この日、小城市が踏み出した第一歩には、大きな意義がある。

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