【リビウ(ウクライナ西部)=佐藤貴生】プーチン露大統領がウクライナ東部の親露派武装勢力を独立国家として承認したことを受け、ウクライナのゼレンスキー大統領は22日、和平の努力を破壊する動きだと批判し、外交的解決を目指すとする一方で「誰にも何も渡さない」と述べ、ロシアに対抗する姿勢を示した。
ウクライナの国家分裂が深刻化し、北大西洋条約機構(NATO)加盟はいっそう困難になった。
ゼレンスキー氏は21日夜から米英首脳と相次いで会談。また、ウクライナとロシアに仲介役の仏独を含めた4カ国で緊急首脳会談を開くよう呼びかけ、米欧の支援確保を進めた。
ロシア軍は10万人以上の兵力でウクライナ国境を取り囲んでおり、同国では近く戒厳令が発令されるとの観測が飛び交っている。
ゼレンスキー氏はこれまで、「ロシア軍の侵攻近し」と繰り返して自国民の国外退避を呼びかけた米欧諸国とメディアに対し、「パニックに陥ってはならない」と呼びかけるなど、いらだちを隠さなかった。
19日には「ミュンヘン安全保障会議」に出席し、「ロシアが侵攻することが確かなのであれば、制裁を科すべきだ」と述べ、侵攻した後では遅いと米欧にくぎを刺していた。
ロシアが親露派武装勢力の独立を承認したことで、ウクライナの経済が一段と悪化するのは確実だ。北大西洋条約機構(NATO)非加盟のウクライナは米欧の軍事力を頼りにできず、厳しい局面に立たされた。