長野県飯綱町で、町民や移住希望者らによる新規事業アイデアを競うビジネスコンテストが開かれた。町が起業家らを対象に行っている事業計画ゼミ「いいづな事業チャレンジ」の卒業式に相当するもの。グランプリに選ばれたのは、リンゴで作る発泡酒「シードル」の醸造所数で日本一を導くアイデア。コンテストは新型コロナウイルス感染症対策のためオンラインで開催されたが、挑戦者らは町でやりたい夢への熱い思いをカメラの向こうの町民らに訴えた。
夢を具体化
いいづな事業チャレンジは、同町が地方創生を目的に約4年前から開催。5回目となる今回の挑戦者は県外在住者も含む5人。昨年8月から先輩起業者らによる相談会や事業計画ゼミなどで夢を練ってきた。コンテストはその仕上げとなる場で、審査員を町長や金融機関、企業経営者、商工会事務局長らが務める。
各挑戦者は、自然の中での陶器づくり体験提供、自然体験の放課後教室開校、公共施設の屋根に太陽光発電パネルを設置する団体の立ち上げなどのプランについて、事業性や新規性などをアピールした。
審査の結果、支度金10万円が贈られるグランプリ(GP)は、同町在住で造園業の神藤(かんとう)裕太さん(31)が獲得。「シードル」の醸造所数を日本一にしようと、リンゴ果汁を新規参入者に販売する計画を提案した。
搾汁請け負い
シードルは近年、国内でも人気になっており、加工用リンゴの価値を引き上げる効果が期待されている。同町は平成30年に政府から構造改革特区「ワイン・シードル特区」に認定され、果実酒製造免許の取得条件も緩和された。
町内にシードルを手掛ける醸造所は2カ所あり、神藤さん自身が近く参入して3カ所になる予定だ。神藤さんの提案は、他社の分もリンゴ搾汁を請け負うことで、新規参入者の設備投資軽減を狙うというもの。「醸造所数で青森県弘前市を超え、飯綱町を日本一のシードルの町にしたい」と意気込む。
審査員の山田保和サンクゼール常務は「しょうゆでは協同組合で原液まで作るというのがあるが、そのモデルをシードルで考えられたということだと思う」と着眼点に関心していた。