ウクライナ情勢が一触即発の危機にある。ジョー・バイデン米大統領は17日、ロシアの軍事侵攻が「近日中に起こる可能性がある」との認識を示した。ロシア側はウクライナ東部で「西側諸国がゲリラやテロリストを支援している」「ジェノサイド(集団殺害)が起きている」などと主張している。緊張緩和の道筋が見えないなか、憲政史上最長、7年8カ月の長期政権を担当した安倍晋三元首相は、夕刊フジの新連載「日本の誇り」(月1回掲載)で、ウクライナ危機に迫った。軍事侵攻(力による現状変更)を許さない姿勢を示し、G7(先進7カ国)主要国として対峙(たいじ)する重要性を説いた。国連の限界や、日本の防衛力・日米同盟の強化、台湾問題、エネルギー問題にも言及した。
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十数万人ものロシア軍が、同国西部のウクライナ国境やベラルーシ、クリミア半島などに展開している。欧米メディアの「近くウクライナに軍事侵攻か」という報道もある。
まず、武力行使を含む、他国への侵攻は決して許されない。これは明確に指摘しておきたい。そのうえで、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の心中を推測してみる。
プーチン氏側は「冷戦が終結して、1990年に東西ドイツが統一する際、米国は『NATO(北大西洋条約機構)を東方に1インチたりとも拡大しない』と約束した。当時のジェームズ・ベーカー米国務長官が、ソ連のミハイル・ゴルバチョフ書記長に口頭で語ったが、それを米国が破った」などと主張している。
NATOには99年以降、ポーランドやハンガリー、ルーマニア、バルト3国など、東欧諸国や旧ソ連諸国が次々と加盟した。ウクライナの「親露派」政権が崩壊したことも含めて、プーチン氏は米国に不信感を持っているようだ。
ただ、先の「約束」については、アントニー・ブリンケン米国務長官が1月7日の記者会見で、「NATOは新規加盟国を認めないと約束したことはない」と否定している。