花粉の飛散が本格化するシーズンを前に、環境省の花粉観測システム(愛称:はなこさん)の事業がひっそりと幕を閉じようとしている。約19年前から花粉シーズンにリアルタイムで情報を発信してきた歴史があるが、最近は気象情報を扱うウェザーニューズ社などの民間サービスが充実。はなこさんは観測地点数で劣っていることもあり、2021年度でサービスを終え、身を引く決意をした形だ。はなこさんは昨年春にウェブサイトを一新したばかりだったが、環境省は民間サービスの後輩にエールを送っている。
「うちの会社のこと?」
環境省は2002年度から毎年、花粉シーズンに合わせてリアルタイムで飛散量の情報を公開してきた。昨年は全国120地点に配置した自動計測器からデータを取得して、2月から5月の花粉飛散の情報を提供したが、同年12月に事業の廃止を発表した。
廃止については民間の気象事業者が同省より多い地点で観測していることや、一部の自治体でも情報を発信する取り組みが行われていること、また省内で「選択と集中」を進めて事業を整理する動きがあったことが理由に挙げられた。
「環境省の発表を見たとき、うちの会社のことを言っているようだと思った」
ウェザーニューズの広報担当者は驚いた様子でこう話す。同社は120地点よりはるかに多い約1000地点に花粉を観測する独自の機械「ポールンロボ」を設置していたからだ。
ポールンロボは直径約15センチメートルの球体で、人の顔のようなデザインをしている。口にあたる部分から空気を吸い込み、ホコリなどをセンサーで除いた上で花粉の量を測定して1分ごとに自動送信するIoT(モノのインターネット)機器だ。
ポールンロボで計測した情報は、同社の公式サイトやスマートフォンアプリ「ウェザーニュース」から発信されていたが、今月3日からは環境省が行っていたのと同様に、専用サイトからCSVファイルという形式でデータをダウンロードできるようになった。このCSVファイルをエクセルなどの表計算ソフトで開くと、市町村別の1時間ごとの花粉飛散量が分かるというわけだ。