関東一円に雪が降り積もった1月6日の夜、ベトナム出身のフンさん(24)は、背中に黒い大型リュックを背負い、凍結寸前の都内の路上で自転車のペダルを踏み続けていた。
自宅に帰るための終電時刻ギリギリの午後11時までの約4時間で、15件の配達をこなしたこの日の稼ぎは約9000円。「雪のおかげでいつもより多かった」(フンさん)とのことだったが、彼が受け取るのはこのうち5500円ほど。4割は「カイシャ」にピンハネされるのだという。
コロナ禍に突入する直前に技能実習生として来日したフンさんは、千葉県の農業関連企業に派遣されている。そこでの仕事を午後5時に終えると寮を抜け出し、電車で1時間の距離にある都心の某ターミナル駅周辺で、ウーバーイーツの配達員として働いているのだ。
こちらが用意したベトナム人通訳を介し、フンさんはこう明かした。
「以前は実習先での仕事の後、ベトナム人が経営しているレストランで皿洗いのバイトをしていた。時給は600円。でもコロナが流行してお客さんがいなくなったので、雇ってくれなくなった。それで、友人の紹介でウーバーイーツを始めた」
技能実習生の副業は、不法就労にほかならない。しかしフンさんは副業をせざるを得ない実情についてこう話す。