Q 55歳女性です。12年ほど前に痛みを感じ病院を受診したところ、左右の乳房のしこりと全身に多発する骨転移が見つかり、ステージⅣの乳がんと診断されました。ホルモン療法のゴセレリン(商品名・ゾラデックス)とタモキシフェンの併用やアナストロゾールを使いましたが、病気が進行したため、診断1年後からは、内服抗がん剤のカペシタビンに変更になりました。これがよく効いていたようで、結局、10年間継続しました。去年2月に病気の進行がみられたため、カペシタビンは中止とし、ホルモン療法のフルベストラント(同・フェソロデックス)と分子標的治療薬のアベマシクリブ(同・ベージニオ)の併用を開始しましたが、アベマシクリブは皮膚などの副作用のためにすぐに中止となり、フルベストラントのみで治療を続けていました。11月に再び病気の進行がみられたため、パルボシクリブ(同・イブランス)を開始しましたが、やはり、さまざまな副作用が出て、中止となりました。
A 病気の進行というのは、どうやって判断しているのでしょうか。
Q 血液検査で腫瘍マーカーをみて、上昇したら治療を変更しています。
A 腫瘍マーカーは参考にはなりますが、それだけで効果を判定するのではなく、コンピューター断層撮影(CT)などの画像検査や症状の変化も重要です。
Q 最近は腰や肋骨(ろっこつ)の痛みがあり、骨転移が進んでいるためだといわれています。
A その痛みをとるのも大事ですね。痛みが強くなるようなら、放射線治療という選択肢もあります。
Q 副作用で薬がうまく使えず、使用できる薬剤が限られてくると思うと不安です。
A 乳がんではホルモン療法や化学療法、分子標的治療がたくさんあり、選択肢がなくなるということはまずありません。実際に、次に使う薬の候補として、ホルモン療法のエキセメスタンと分子標的治療薬のエベロリムス(同・アフィニトール)の併用や、点滴の抗がん剤など、いくらでも挙げることができます。そもそも、手持ちのカードの残りを数え、「残された選択肢はこれくらいしかない」と思うのはよくありません。薬はあくまでも道具であって、適切なタイミングで適切な道具を使えばよく、道具のことばかり考えて過ごすようなものではありません。ところで、普段の生活で大事にしていることはありますか。
Q 両親の介護のために仕事を辞めていたのですが、最近は自分の時間も持てるようになって、フラワーアレンジメントを楽しんだり、新聞にエッセーを投稿したりしています。そういう時間も大切にしながら、できるだけ長生きしたいです。
A 素晴らしいですね。その目標のために、いろいろな道具を試していくといいと思います。目標にプラスに働くならうまく使い、マイナスになってしまうようなら使わない方がいいわけです。治療を中心に考えるのではなく、どのように生きていきたいかを中心に考えるのがよいですね。ご自分の大事にしているものを担当医にも伝え、よく話し合って、治療方針を決めていってください。
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回答は、がん研有明病院乳腺内科部長、高野利実医師が担当しました。
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