部下の自己実現を社会貢献と接合させる
二つ目が<視野拡大>のフィードバックです。
視野拡大のフィードバックの目的は「自己実現から社会貢献につなげていくこと」にあります。
仕事での自己実現は、確かに部下の成長につながります。しかし、それは単なる自己満足とは異なるのだと國武さんは強調しています。私も全く同意します。
自己満足、独りよがりではない、発展性のある自己実現へと変化させていくために、視野拡大のフィードバックを行うのです。
視野拡大の問いかけは、例えば次のようなものです。
「あなたの仕事は、どんな風にお客様の役に立っていると思う?」
「あなたの仕事は、どれくらい暮らしを豊かにしていると思う?」
「あなたがお客様だったら、あなたの仕事にどれくらい感謝するかな?」
話し終わったら、先ほどと同様、振り返りの質問します。
「話してみて、何か気が付いたことや感じたことはある?」
自分の仕事がお客様や社会とどうつながっているのか、どう役に立っているのか、想いを馳せてもらいましょう。もちろん、上司のあなたもご一緒に。
そうすることで、部下個人としての仕事上での自己実現が、社会貢献という視点と合致し、結果としてそれが「会社がどのようなパーパスやミッションの下で活動しているのか」ということと結びつくのです。
部下の挫折を回避、軌道修正させる
最後、三つの目のステップが<軌道修正>のフィードバックです。
軌道修正のフィードバックの目的は「理想と現実とのギャップを解消していくこと」にあります。
部下が思い描く仕事上での自己実現。これを成し遂げていく過程には楽しいことばかりではなく、困難や壁にぶち当たることが多々あるでしょう。そこで立ち止まったり、心が折れてしまう人は、自己実現を果たすことはできません。
部下が直面している困難や悩みに対して、上司が応援者として仕事の価値や今後の前向きな側面について確認を促すことで、脱線しそうな状況から軌道修正する道を見つけてあげ、理想に近づくためのサポートをするのです。
「仕事のやりがいを取り戻す方法があるとしたら、どんなことだろう?」
「いまの仕事に、別の価値や可能性を見出すとしたら、どんなこと?」
「これから数年先を見据えたときに、いまの仕事はどんな価値をもたらしてくれるかな?」
「これまで頑張ってきたことが、ここからの仕事に活かせるとしたらどう活かす?」
このような問いかけによって、部下は脱線しそうな状況から軌道修正して、再度自己実現に向かう道に戻り、これからの道筋を見つけ出すことができるでしょう。これは部下のみならず、上司の私たちも、忙しさに追われ続けたり困難に直面したりすると、本来の目的や理想を忘れてしまいがちです。
「そもそも、何を大切にしたいの? 成し遂げたいの?」「失敗を活かすなら?」「できないと思っていることが、実はできるとしたら?」「結果が出るまでのプロセスを教えて」。これらの、視点を転換する、リフレーミングするような質問を、平素から携えておいて、いざという局面で繰り出してみるとよいでしょう。パッと視界が開けるものですよ。
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部下の自己実現は、自己満足でも絵空事でもありません。それを陳腐なものにせず、実際の業務と結びつけながら、発展性のある自己実現へと変えていってあげる必要があります。
そのために、上司が広い視野を持って部下を見守り、応援し続けることが大切です。その具体的な方法のひとつが、3つのフィードバック。ぜひ活用し、部下の自己実現を支援し、上司の皆さん自身も自己実現を果たしましょう!