埼玉県の医療審議会は21日、着工が延期となっているさいたま市での順天堂大医学部付属病院整備構想について協議した。大学側が開業が当初計画から約10年遅れるという新たな計画を県に示したことに対し、審議会委員の医療関係者らからは「時期が先過ぎる」との批判が相次いだ。審議会は大学側に開業前倒しがどの程度可能かを尋ね、3月末に予定する次回会合までに回答を求めると決めた。
新病院は、さいたま市緑区と同市岩槻区にまたがる浦和美園地区の約7・7ヘクタールで整備が予定されている。当初の計画では平成30年までに着工し、その約3年後に800床の病院の開業を目指していた。
しかし、土地整備に想定以上の時間がかかったことなどから整備構想は一時宙に浮き、大学が昨年末に県へ提示した新たな計画によると、着工は令和8年、開業は12年にずれ込む。
21日の医療審議会で、県医師会の水谷元雄副会長は「12年はかなり先だ。疑問に思う」と断じ、当初計画より工期が伸びることにも懸念を示した。
県議会最大会派・自民党議員団の小島信昭団長は「本来なら昨年完成する計画が、いまだに実行されていない。県民も不安だし、議会にも不満がある」と訴えた。
県の医療審議会に先立って17日に開催されたさいたま市地域医療構想調整会議でも、委員から「約10年後の開業では人口規模や社会情勢が変わってしまう」「規模を縮小しても早期開院の努力をしてほしい」といった意見が相次いだ。
これを踏まえ、県の医療審議会では、どれだけ開業を前倒しできるかを大学側に尋ねることを決めた。医療体制が手薄な県北部への医師派遣が期待されていることから、開業前のどの時期に派遣が可能かについても確認する。(中村智隆)