コロナ禍に蔓延する違法高利の「買い取り金融」

こわもてが登場する映画やドラマでおなじみのヤミ金業者が、新型コロナウイルス禍で収入が減ったサラリーマンらをターゲットにして、高金利の融資をチラつかせている。利息の上限を定めた法律の網を逃れるため、貸し付けの手口は巧妙化。二束三文の「商品」を介在させることで売買を装うのが最近のはやりだ。危機感を募らせた弁護士や司法書士らは昨年12月に被害撲滅を目的とした全国組織を結成し、違法金利の返還を求めた訴訟を一斉に起こすことも検討している。

目立つ「先払い型」

商品売買を装う手口は主に2通り存在する。写真などを商品に見立て、代金後払いで渡した後にキャッシュバック名目で速やかに現金を融通する「後払い型」と、逆にそれらの買い取り名目で先に現金を融通する「先払い型」だ。包括して「買い取り金融」とも呼ばれる。

大阪の弁護士らでつくる「大阪クレサラ・貧困被害をなくす会」(大阪いちょうの会)では、これらを事実上の違法なヤミ金融と認定。昨年12月17日に、全国の約20人の弁護士や司法書士と連携した「買い取り金融対策全国会議」(大阪市)を立ち上げた。

同会議によると、最近目立つのは先払い型で、顧客獲得の手口は巧妙だ。

業者はインターネット上で「スマートフォンやゲーム機を買い取る」などとうたい、利用者を募集する。

仮に利用者が3万円を借りたい場合、それらの画像をメールやSNSで送信すると、業者から買い取り代金名目で現金3万円がすぐに振り込まれる。

しばらく経過した後、ヤミ金業者側から「実物が届かない」と苦情が入り、計5万円の〝違約金〟が請求される。元金に当たる買い取り代金3万円に事実上の利息2万円が加わり、給料日に合わせて借金返済が完了するというのが、一般的な流れだ。

「商品売買」名ばかり

利息制限法は、元金が10万円未満の場合、金利は年20%まで、元金が10万円以上100万円未満の場合は年18%まで、元金が100万円以上の場合は年15%までと定めている。

3万円の短期借り入れに対する2万円の利息について、同会議の前田勝範司法書士は「規制を大きく超える」と指摘した上でこう続ける。

「『商品売買』や『違約金』とは名ばかり。カネの貸し借りが、ヤミ金業者と利用者の間の暗黙の了解のもとで行われている」

特に、給与収入のあるサラリーマンは勤務先をはじめ身元がほぼ明らか。ヤミ金業者にとっては取りはぐれが少ない〝良客〟として狙われる傾向が強まっているという。

相談者の多くは20~30代

ヤミ金業者のこれまでの手口をさかのぼると、平成30年ごろには将来の給料を担保にして事実上、カネを貸し付ける「給料ファクタリング」が横行。一昨年ごろからは、二束三文の商品にあえて高い値を付けて利用者に買い取らせ、販売価格の何割かを即座にキャッシュバック、後に代金名目で借金を返済させる「後払い型」が多く現れた。

ただ、こうした手口が次々と実質的な貸金業と認定され、警察当局による摘発が強化された結果、「先払い型」の流行につながったとみられている。

大阪いちょうの会が昨年11月までの1年間で受け付けた買い取り金融に関する相談は約170件で、多くが20~30代のサラリーマンからだった。

買い取り金融対策全国会議では今後、被害事例を収集し、業者に違法な利息分の返還を求める民事訴訟を一斉に起こすことや、刑事告訴などを検討する。

被害相談は全国会議事務局(06・6782・0066)、または大阪いちょうの会(06・6361・0546)。(杉侑里香)

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