「いつか」は明日かも 繰り返し震災の記憶を 鹿間孝一

産経ニュース

北海道出身の僕には衝撃的なデータだった。政府は昨年暮れ、北海道から東北地方の太平洋沖に延びる千島海溝と日本海溝沿いでマグニチュード(M)9クラスの巨大地震が発生した場合の被害想定を公表した。真冬の深夜に起きる最悪のケースでは、20メートルを超える津波が広域に襲い、死者は7道県で19万9000人に達する。とくに北海道が13万7000人で最も多い。

地元ではさぞかし大騒ぎだろうと、年明けに友人に電話したら、「それより、この冬は雪が多くて大変だよ」と話題を変えられた。いつ起きるかわからない地震よりも、現実の雪害やコロナ禍の方が関心事のようだ。

11年前の東日本大震災で、次は南海トラフ巨大地震だと危機意識が高まった。今後30年以内に70%から80%の確率で起きるといわれ、東海地方から近畿、四国の太平洋岸を中心に、死者は32万3000人、経済被害は220兆円を超えると予想される。だが、切迫感が次第に薄れてきたように思える。

災害心理学に「正常性バイアス」という言葉がある。人間の心は予期せぬ異常や危険に対して、ある程度、鈍感にできている。言い換えれば、ある範囲までの異常は、異常だと感じずに、正常の範囲内のものとして処理するようになっている。それで、「まだ大丈夫」とか「自分だけは別」と逃げ遅れてしまう。「いつ起きるかわからない」は「今日でも、明日でもおかしくない」なのに。

政府も被害想定を公表するなら、多忙な年末ではなく、年が明けてからでよかったのではないか。1月17日は阪神大震災の日である。追悼行事で防災の心構えを新たにする。

それに肝心なのは「死者を8割減少できる」という避難のあり方である。津波は地震発生からタイムラグがある。どこへ、どう逃げたらいいか。津波の高さや津波避難ビル・タワーの場所も頭に入れ、避難訓練をしておくべきだ。家族と離れ離れになった場合の連絡方法や合流場所を決めておく必要がある。生き延びるために最低限の食糧や水などを持ち出せるようにしておかなければいけない。

この時期になると、阪神大震災で経験した突き上げるような揺れを思い出す。そして、安水稔和(やすみず・としかず)さんの震災詩をかみしめる。

これはいつかあったこと。/これはいつかあること。/だからよく記憶すること。/だから繰り返し記憶すること。/このさき わたしたちが生きのびるために。

しかま・こういち 昭和26年生まれ。社会部遊軍記者が長く、社会部長、編集長、日本工業新聞社専務などを歴任。特別記者兼論説委員として8年7カ月にわたって夕刊1面コラム「湊町365」(産経ニュースでは「浪速風」)を執筆した。

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