冬。筆者にとっては寒くて水に触れるのも億劫(おっくう)な季節です。しかし、淡水生物の水槽管理を担当していると冬でも生き物を採りにいかなければいけないこともあり、泣き言は言っていられません。寒さを我慢して採集に行くと、暖かい季節とは違う姿をみせてくれることもあります。今回は、河川を中心に水辺の生き物が冬をどのように過ごしているのかをご紹介しようと思います。
水温が下がってくると多くの生き物は動きが鈍くなり、冬眠するものも現れます。例えば、ザリガニやサワガニなどの甲殻類は水辺の泥や石の下に潜り込み、じっと冬を過ごします。しかし、時には空腹のイノシシなどに掘り出され、食べられてしまうようです。
魚類も同様に動きが鈍くなり、河川の深い淵や落ち葉のたまったところでじっとしているのをみかけます。冬は河川の水量が下がる時期でもあるため、農業用水路では水が無くなったようにみえますが、場所によっては水が残っており、ミナミメダカやドジョウなどの魚たちも水とともに移動し集まっています。冬の川をのぞいてみても魚の数が少ないようにみえるのは、集まって過ごしていたからなのですね。
ただし、渓流部にいるタカハヤやアマゴなどは冷たい水を好むためか、冬でも元気に泳ぎ回っています。住む場所によって違いがありそうなのも面白いですね。
また、サンショウウオの仲間も冬に活発になります。和歌山県内にはヤマトサンショウウオやマホロバサンショウウオ、オオダイガハラサンショウウオなどいくつかの種が分布しますが、彼らは冷たい水を好み標高の高い山の水辺や湿地、沢で暮らします。多くの種の産卵期にあたる冬には異性を求めて活発に移動するため、冬に沢で生き物を探して石をめくっているとまれに出会うことができます。
なお、サンショウウオ類の多くは個体数が少ないため、和歌山県の絶滅危惧種や天然記念物にも選定されています。野外で見かけたとしても、写真を撮影する程度にして持ち帰らないようにしましょう。
冬は寒くて外へ出るのもためらいがちになりますが、この季節でないとみられない生き物の姿もあります。春になれば生き物が増えて観察もしやすくなりますが、たまには、暖かい恰好(かっこう)をして野外へ生き物探しにでてみるのも面白いですよ!(和歌山県立自然博物館 国島大河)