リトアニア、親台湾政策めぐり大統領と外相が対立

産経ニュース
「駐リトアニア台湾代表処」のプレートの前でポーズを取る職員ら=2021年11月18日(台湾外交部提供・共同)
「駐リトアニア台湾代表処」のプレートの前でポーズを取る職員ら=2021年11月18日(台湾外交部提供・共同)

【パリ=三井美奈】バルト三国の一つ、リトアニアの政府内で親台湾外交をめぐる対立が起きている。ナウセーダ大統領は4日、昨年11月に国内に設置された台湾当局の代表機関に「台湾代表処」の名称を認めたのは「過ちだった。私は関与しなかった」と主張。ランズベルギス外相は「すべて大統領とともに決めた」と反論した。内政バトルに中国と米国が「参戦」し、場外戦に発展している。

一連の発言は、リトアニア公共放送LRTなどが報じた。ナウセーダ大統領は、代表機関の設置自体は正しいとしながら、「名前が問題。対中関係に大きな打撃を与えた」と発言し、ランズベルギス外相に打開策を示すよう求めた。これに対し、同外相は「リトアニアは悪いことをしていない。価値観に基づいて方針を決めたため、罰を受けている」と述べ、中国がリトアニアに「報復」として経済圧力を加えていることこそが問題と主張している。

大統領と外相の対立について、ビリニュス大のコンスタンチナス・アンドリヤウスカス准教授は「2人がライバル関係にあるのが原因」と指摘する。ナウセーダ大統領は、中央銀行の元理事で経済専門家。ランズベルギス外相は2020年の議会選で勝利した中道右派政党の党首で、かつて大統領選でナウセーダ氏の対立候補だったシモニテ現首相を擁立し、新政権を発足させた。

ナウセーダ大統領の発言を受け、中国外務省報道官は5日、「誤りを正すのは正しい方向への一歩。重要なのは行動だ」と述べ、台湾代表処の名称変更を促した。これに対し、米通商代表部(USTR)のタイ代表はランズベルギス外相と電話で会談し、支持を表明。ツイッターで「リトアニアは中国の経済的威圧に直面している」と指摘した。

中国は台湾代表処の開設は「一つの中国」政策に反すると批判。リトアニアからの出荷品の通関を差し止める報復に出ている。中国は実施を認めていないが、欧州連合(EU)に影響が広がっており、欧州委員会は世界貿易機関(WTO)への提訴も辞さない構えを示している。

リトアニアは1990年、民主化運動の末にソ連から独立回復を宣言した歴史があり、中国の圧力を受ける台湾を支援してきた。昨年11月にはナウセーダ大統領が、バイデン米大統領と訪英中に会い、親台政策で「支持を得た」とも述べていた。しかし、隣国ロシアの脅威が増す中、国内には対中関係悪化への不安も強く、最近の世論調査では41%が政府の政策に不支持を表明していた。