「ホームレスはどんな生活をしているのか?」という疑問を長年にわたり抱いていた私は、東京五輪の開会式から2カ月間、ホームレス生活を送った。
さかのぼって2021年5月。KADOKAWAの編集者である川戸崇央氏から連絡をいただき、都内某所で2人きりの企画会議が始まった。私はそこで5つの企画を提案した。どれもそれなり練ったものであった気はするが、ダメ元で出した最後の1つのインパクトには勝らなかった。ほか4つに関しては、川戸氏も私も、もはやその断片すら覚えていない。
こうして、「東京でホームレスになる」という企画はあっという間に進んでいったものの、路上に眠るという行為はそもそも不法占拠になるという理由から、最終的に出版社の許可が下りないだろうと私は踏んでいた。だが、取材前に弁護士のもとへ取材に出向くと、まさかの答えが返ってきた。
「取材という名目であれば、違法にはならないはずだ」
こうして出版社の法務部も通過し、おまけに「今年度末に発売」というリミットまで設けられ、私の路上行きは決定した。