飛躍ベンチャー(下)

蓄電池革命 被災地へ「電気を運ぶ船」 再エネ・EV促進 日本経済の起爆剤に

産経ニュース
パワーエックスの電気運搬船のイメージ(同社提供)
パワーエックスの電気運搬船のイメージ(同社提供)

2050(令和32)年のカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の達成に向けて、ひときわ注目されているのが蓄電池技術だ。太陽光や風力でつくった電気をためることができるため、脱炭素化に欠かせない再生可能エネルギーや電気自動車(EV)の普及を支える重要な役割を担う。市場の成長余地が大きく、この分野には有力ベンチャー企業が登場してきている。

20年代後半、日本の沖合100キロの海上に浮かぶ「浮体式」の洋上風力発電所でできた電気を海底ケーブルで送るのではなく、蓄電池を載せた船で陸まで運ぶ。災害時には、被災地にこの船が向かい、非常用電源として活躍する-。

航路を基幹の送電線に見立てた、こんな壮大なビジョンを描くのは、昨夏創業で蓄電池製造を手掛けるパワーエックス(東京都港区)だ。最高経営責任者(CEO)は、衣料品通販大手ZOZO(ゾゾ)で最高執行責任者(COO)として辣腕(らつわん)を振るい、着るだけで体のサイズが測れる「ZOZOスーツ」などの開発に携わった伊藤正裕氏。

伊藤氏は「(一体運営から事業分離された)発電、送電に続き今度は蓄電で重要性を持つパラダイムシフト(価値観の転換)が起きる」と考え、ZOZOを離れ、エネルギー分野への参入を決断した。創業間もないパワーエックスだが昨年12月、造船最大手の今治造船(愛媛県今治市)との資本業務提携にこぎ着け、10億円の出資を受けた。両社は電気を輸送する「電気運搬船」を世界で初めて建造。初号船を25年に完成させ、実証実験を行う計画だ。

政府は昨年10月に決定した政策指針「エネルギー基本計画」で、30年度の電源構成について再エネの割合を19年度実績の約2倍の36~38%と定めた。火力依存からの脱却も盛り込み、日本のエネルギー政策は転換点を迎えた。

多くのエネルギー資源を輸入に頼る日本にとって、再エネの普及拡大は経済安全保障の観点からも重要だ。特に期待されるのが洋上風力だが、効率的に発電するため風の強い沖合まで出れば、送電用海底ケーブルの埋設にかかるコストや環境への負荷は大きくなる。パワーエックスは船を使うことでこれらの課題を乗り越えようとしている。

船に搭載する蓄電池は自社開発する。価格競争力を持たせるため、中核部品の「電池セル」だけは海外から調達する。今年春ごろに約100億円を投入し工場建設に着工、24年にも生産を開始する。

蓄電池はEV向けなどにも作る。蓄電池に通信機能を装備させてインターネットに接続。クラウド上で利用状況をリアルタイムで把握し、効率的な運用を図る仕組みも構築する。

蓄電池の分野では、他にも多くのベンチャーが活躍する。慶応大発のAPB(東京都千代田区)は昨年、電極(集電体)などの部品に金属ではなく、樹脂を使う次世代型リチウムイオン電池の生産工場を開設した。現行の同電池と比べて発火の危険性が低く、容量は約2倍。加工が容易な樹脂を使い量産コストを半分程度に下げられることから、関心が高まっている。

調査会社の富士経済によると、蓄電池(EV向け除く)の35年の世界市場規模は3兆4460億円と20年比の3.4倍に拡大する見通し。日本勢は技術面で優位に立つが、市場を支配する中国・韓国勢が技術面で猛追する。そこへ吹き込んだのが脱炭素の風だ。

日本政府は脱炭素化戦略の一環で蓄電池産業の強化に乗り出し、21年度補正予算に1000億円を計上。先端電池工場の建設や研究開発に補助金制度を設けた。国内自動車メーカーもEV投資の拡大を打ち出した。

「脱炭素は他国の資源に頼らずエネルギーをつくる機会を広げる。蓄電池はそれを促進するカタリスト(起爆剤)になる」。パワーエックスの伊藤氏はこう語り、日本の経済安保への貢献を誓った。(米沢文)

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