18歳の地図

(4)少年法改正 犯した罪 償い方は

産経ニュース
今は亡き娘、博美の写真に手を合わせる寺輪悟。15歳だった博美は、当時18歳の高校生の少年に命を奪われた=令和3年12月、三重県四日市市(須谷友郁撮影)
今は亡き娘、博美の写真に手を合わせる寺輪悟。15歳だった博美は、当時18歳の高校生の少年に命を奪われた=令和3年12月、三重県四日市市(須谷友郁撮影)

和室の一面にびっしりと並べられているのは、亡き娘が友人と写る思い出の写真。笑顔の娘に向けて手を合わせ、心の中でゆっくりと語りかける。

「義務教育だって15歳で終わる。18歳は、もう大人と同じだよな」。4月の少年法改正に対する寺輪悟(53)=三重県四日市市=の偽らざる思いだ。

平成25年8月、娘の博美=当時(15)=の命を、当時18歳の高校生の少年によって奪われた。突きつけられたのは、加害少年が少年法に守られ続ける現実だった。

花火大会からの帰宅途中に行方不明となった博美は、数日後に遺体で発見された。死因は、口や鼻を強く押さえつけられたことによる窒息死だった。

半年あまりたった26年3月、三重県警は、博美と面識のない少年を強盗殺人などの容疑で逮捕した。少年の実名は明かされず、津地検は「殺意が認定できない」として、少年をより刑罰の軽い強制わいせつ致死罪などで起訴した。

遺族側の気持ちなど一切くんでくれることもなく、刑事裁判は淡々と進んだ。少年に有罪判決が下っても、救われた気はしなかった。「実名が出ていないから、出所後に就職だってできるかもしれない。娘に未来はないのに」。重大な罪を犯しても、「20歳」という年齢で区切る少年法に矛盾を感じた。

「誰でも、ある日突然、被害者になる可能性があることを分かってほしい」。各地で講演をしながら当事者意識や被害者救済の重要性を訴える寺輪にとって、今回の法改正は始まりにすぎないとの思いも強い。

「人の命を奪ったらもう終わり。更生? 自分の子供が殺されても、そう言えるのか。少年法はもういらない」

未成熟な少年に対し、刑罰よりも教育による立ち直りを優先させる「保護主義」を基本理念とする少年法。4月以降、全ての事件を家裁に送る仕組みを維持する一方、18~19歳を「特定少年」とした上で、家裁から原則検察官に送致(逆送)し、20歳以上と同じ刑事手続きを取る事件を拡大する。実名報道も起訴段階で解禁される。

厳罰化ともいえる流れに、社会の意識変革も求められる。犯罪心理に詳しい新潟青陵大大学院教授の碓井真史(うすい・まふみ)(62)は「法律である以上、どこかで区切る必要がある。これからは18歳から『大人』であると社会が認識し、少年を育てなければならない」と指摘する。

「14、15歳では気付けなかったことが、大人に近い年齢になって理解できた」

埼玉県の大滝翔(26)は今、こうかみしめる。中学2年の14歳で逮捕されて以降、成人するまでに4度逮捕された。計約4年半を少年院で過ごしたが、反省はしなかった。

17歳で暴力団組員になると決めた。泣き崩れて止める母親を見ても、決意は変わらなかった。4度目の逮捕は、18歳。犯罪傾向が進んでいるとみなされ、凶悪事件などを犯した少年が入る神奈川県横須賀市の特別少年院に送られた。

母親は月1度の面会に必ず訪れ、寄り添い続けてくれた。その母親を悲しませてきたことを申し訳なく思った。このままでは変われない―。ようやく心境の変化が生まれた。

特別少年院での1年間、資格や漢字の勉強に励み、著名人の書籍を読み、社会で生きていくことに前向きになった。19歳で出所後は暴力団に入ることなく、父親の会社で働く。今は少年院などを出た少年らを雇い更生の手助けをしている。

「少年院には更生に向けて手を差し伸べてくれる法務教官がいる。刑務所だったら、自分も変われていたかは分からない」

これからは、18歳がその境目になり得る。まだ大人になろうとしている段階だから、いい方向にも悪い方向にも転がる。そうであるからこそ、あの頃の自分と同じような少年たちに、罪を償った上で、立ち直るきっかけがある社会であることを願う。

加害者が大人であれ、子供であれ、変わらないことがある。碓井は言う。「加害者を支えるのも、被害者やその家族を支えるのも、法律ではなく社会だ」。投げかけられた言葉は重い。(敬称略)

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