マツダにとって「CX-5」は、グローバル販売台数で3分の1を占めるメインモデルである。昨今のSUVブームが追い風になり快走、世界各地で人気を博している。そんな主力車種に、鮮度を高めるためにカンフル剤を打ち込むのは当然の流れであろう。いや、安定しているモデルにメスを入れることは大英断でもある。
毎年イヤーモデルをリリースしているマツダが、恒例の年次改良を発表。最新の技術を次回のフルモデルチェンジまで温存することなく、その年々の最新技術を余すことなく投入するのがマツダのスタイルだ。ゆえに主力モデルのCX-5を年次改良するのは当然のことであろう。
ただ、今回のマイナーチェンジは一般的年次改良とはちょっと異なる。エクステリアやインテリアに筆を加え、新鮮味を加えるのは常套手段だが、それだけではなくプラットフォームにも手を加えているのだ。
ボディ剛性を高めるために、フロントのメンバー付近へ補強を加えた。その理由は、乗り心地の改善である。マツダのエンジニアが度々口にする「ツブザラ路面」での質感を求めたのだ。路面の経年変化や、往来するトラックが掘り込んだ荒れたアスファルトでの不快な振動やノイズを抑えるための細工である。そのためにボディを強化し、バネやダンパーの味付けを整えているのだ。
ただし、その程度の細工はともに驚かされるものではない。どのメーカーも一様に改良で手を付けるポイントだからだ。今回CX-5で改良したのは、シートの剛性確保である。強化されたプラットフォームに強固なシートフレームを組み付けた。これによって、コーナリング中に車体が揺すられても乗員の過剰な揺れを抑えることに成功しているのだ。
CX-5の走り味はもともと上質である。スポーティなフットワークではなく、しっとりと路面を舐めるような湿度感を特徴としてきた。その大人の味わいがさらに磨かれたように感じた。