詐欺容疑で逮捕・起訴されてしまえば、10年以下の懲役刑を科せられ、初犯でも実刑判決を受ける可能性がある。受け子は現金を受け取る際に顔を覚えられてしまう可能性があり、出し子は防犯カメラに映る可能性が高い。犯行への関与を最も立証されやすい。
警視庁犯罪抑止対策本部によると、令和3年上半期(1~6月)時点で特殊詐欺で逮捕された被疑者は計390人。そのうち出し子と受け子は計298人で、全体の7割超に対し、かけ子はわずか6人だった。
摘発逃れの手口も巧妙だ。通常、拠点を設けて数人が集まって被害者宅に電話をかけるかけ子ら。今回の事件では自宅から詐欺電話をかける〝テレワーク〟をしていたという。ただ、コロナ対策ではなく、摘発を避けるため拠点を設けなかったとみられる。
報酬にも格差
ハイリスクな実行犯に対し、特殊詐欺でだまし取った金の8割超は、表には出てくることのない主犯格や実行犯を募集する「リクルーター」などへ配分されている。
今年上半期の特殊詐欺の役割別の摘発は▽首魁(主犯格)9人▽指示役5人▽見張り役11人▽リクルーター33人。被害者らと関わることのない主犯格らの摘発は全体の1割超に留まり、リスクは圧倒的に低い。
警視庁犯罪抑止対策本部などは、SNSを巡回して今回の事件のように詐欺などの犯罪への加担をあおるような書き込みがないか目を光らせている。
発見すれば、「詐欺などの実行犯を募集する不適切な書き込みのおそれがある」と指摘。「犯罪グループが約束を守るわけがない」「逮捕のリスク大」などと募集に応じないよう注意喚起している。
警視庁幹部も「受け子や出し子は詐欺グループからすればしょせん使い捨てに過ぎない。捕まるリスクと数万円の報酬が釣り合うわけがない」と詐欺に加担しないよう呼び掛けている。(宮野佳幸)