関西の鍋

「てっぽう」に魅せられて てっちり 伝え続けた庶民の味

産経ニュース
フグ料理の老舗「黒門 浜藤」のてっちり。さばいたばかりの新鮮なフグが山盛り=大阪市中央区(前川純一郎撮影)
フグ料理の老舗「黒門 浜藤」のてっちり。さばいたばかりの新鮮なフグが山盛り=大阪市中央区(前川純一郎撮影)

鍋でも多彩な料理を生み出してきた大阪。その「食の都」を代表する鍋といえば「てっちり」があげられるだろう。フグの全国消費量の6割を占めるとの説もある大阪の「フグ食文化」を支えてきた。

ちり鍋ナンバーワン

「大阪では水炊きをポン酢で食べる『ちり鍋』が好まれているが、中でも一番ふさわしいのはてっちり。ポン酢で味わえば、脂ののったフグもあっさり食べられ、お酒にも合う」

大阪の食材・食文化の普及に取り組むNPO法人「浪速魚菜の会」(大阪市天王寺区)代表の笹井良隆さん(65)は話す。

昭和23年、大阪府条例でフグ食が解禁され、大阪・新世界などの「づぼらや」(昨年9月閉店)がフグのアラのダシに豆腐と青ネギを入れた「ふぐ汁」をつくり、人気を博した。これがてっちりの原型になったといわれている。アラからは上等なだしが取れ、その味わいやリーズナブルな価格が受けたという。

今では高級魚になった天然トラフグも、30年代までは大阪湾でもよくとれた。スーパーでも販売されるようになり、庶民の味になったという。その後、価格の高騰で〝高根の花〟となったものの、現在も鍋の定番であり続けている。

笹井さんは「よく大阪人ってケチやといわれますが、高いフグを店に並んででも食べる。おいしいもの、認めたものにはちゃんとお金を払う」。

ポン酢と合う味

大阪・ミナミの黒門市場(大阪市中央区)にあるフグ料理店「鮮てっちり 黒門 浜藤(はまとう)」。フグの販売も手がけており、かつて「フグの相場は浜藤で決まる」とまでいわれた老舗だ。

同店のてっちりは、最上級のトラフグの中で1・5キロ以上のものを使う。1~2日寝かせ、うま味を引き出して調理する。店主の和島侑亮さん(39)は「大きな魚は寝かせないと味が出ない」と話す。

だしは店秘伝のオリジナル。昆布は北海道・羅臼産、カツオは鹿児島・枕崎産だ。フグを先に入れて、あとは野菜。炊けば炊くほどほろほろになっていく。ふわっとしたフグの食感とポン酢のすっきりとした酸味がよく合う。

ちなみに大阪では、フグのことを「てっぽう(鉄砲)」、刺し身を「てっさ」と呼ぶことがある。フグ毒に当たった場合に命の危険があることからの表現だ。てっちりの名も、てっぽうに由来する。

そんな穏やかでない名前を付けながらも愛され続けたてっちり。怖さはあっても「おいしいものは逃さない」という大阪人の気質が、フグ食の文化を支えてきたのかもしれない。

古代から愛され

縄文時代の遺跡から骨が見つかるなど、フグは古代から日本人に好まれてきたようだ。しかし、調理方法が確立していなかった時代、フグを食べて中毒となる事例が多数発生。豊臣秀吉が「河豚(ふぐ)食禁止の令」を発令し、江戸時代になっても各藩は食用を禁止した。

しかし、大阪の海は「魚庭(なにわ)」とも呼ばれ、フグも根強い人気があったという。

「ふぐ博物館」(大阪府岸和田市)館長で「フグ博士」として知られる北濱喜一さん(94)は「昭和29年から水揚げなどの記録をとり始め、私が全国で大阪が一番消費量が多いと言ったんです。フグはコラーゲンの塊でタンパク質も豊富。淡泊で特徴のないところが魅力」と話す。

オダサクが愛したあの鍋も

てっちり以外にも多彩な鍋料理を生み出した大阪。文学作品でも、鍋料理が重要な役割を果たしている。

「誘われて戎橋(えびすばし)の丸万でスキ焼きをした。その日の稼ぎをフイにしなければならぬことが気になったが(略)」。大正から昭和にかけての大阪を舞台に男女の悲喜劇を描いた織田作之助の小説「夫婦善哉」には、大阪・ミナミの魚すき店「丸萬」が登場する。

魚すきとは、すき焼きの鍋にメインの具材として魚を入れた料理。幕末の元治元(1864)年に大阪・戎橋の南詰めで創業した「丸萬本家」の名物鍋だ。現在は大阪・帝塚山と堺市に移っているが、昭和初期には作之助ら多くの文化人や芸能人が通ったという。

「だしはやや変えている部分もあるけど、主なレシピは変わっていない」と9代目店主の後藤英之さん(59)。サワラ、タイ、ブリなど旬な魚を使う。魚の切り身に秘伝の甘辛タレで下味をつけ、平鍋に魚と焼き豆腐、生麩、春菊、シイタケ、ネギなどを入れて煮る。

後藤さんは「座敷で鍋を囲んでいると、その人の人柄まで見えてくる。昔ながらの味をこれからも伝えていきたい」と話している。(上岡由美)

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