年末記者ノート

池袋暴走事故公判 平行線の主張に遺族の無念さ

産経ニュース
池袋暴走事故の実況見分に立ち会う飯塚幸三受刑者=2019年6月、東京都豊島区(納冨康撮影)
池袋暴走事故の実況見分に立ち会う飯塚幸三受刑者=2019年6月、東京都豊島区(納冨康撮影)

平成31年4月、東京・池袋で乗用車が暴走し、松永真菜(まな)さん=当時(31)=と長女、莉子(りこ)ちゃん=同(3)=の2人が死亡、9人が負傷する事故が起きた。今年9月、東京地裁は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪に問われた旧通産省工業技術院の元院長、飯塚幸三受刑者(90)に禁錮5年の実刑判決を下した。検察側と弁護側の主張が平行線だった公判中、法廷では遺族らのやり場のない無念さが垣間見えた。

異様な雰囲気

9月2日午後。雨が降りしきる中、判決公判を終えた飯塚受刑者を乗せたとみられるタクシーが、地裁脇からゆっくりと出ようとしていた。記者も地裁前にひしめく報道陣の中にいた。タクシーがまさに門を出ようとしたとき、その場にいた野次(やじ)馬とみられる人々が口々に怒鳴った。「控訴するなよ!」「恥を知れ!」。地裁前は一時、異様な雰囲気に包まれた。

昨年10月の初公判以来、1年近く続いた裁判。弁護側は暴走した車に異常があったと無罪を主張し、アクセルとブレーキの踏み間違いだったとする検察側と真っ向から対立した。高齢の飯塚受刑者は被告人質問などで時折言いよどんだり、沈黙を繰り返したりすることも多かった。

なぜ最初から

事故と向き合い、反省してほしい-。事故の遺族側からは切実な声が上がっていた。6月21日に行われた被告人質問では、真菜さんの夫、拓也さん(35)が被害者参加制度を利用して、飯塚受刑者に直接質問を行った。

「(亡くなった)2人の無念と向き合っていないといわれても、仕方ないとは思いませんか」。拓也さんがこう問う場面があった。

それに対し、飯塚受刑者が「向き合っていないという意味はどういう意味か分かりませんけれども、私としては心を痛め、重く受け止めているつもりです」と返答したとき、拓也さんは力なく「ああ…」と嘆息ともつかない声を漏らした。言葉にならない声には、無念さや憤りが凝縮されていたように聞こえた。

判決後、最終的には飯塚受刑者も過失を認めて控訴はしなかった。だが、それならばなぜ最初から認めなかったのか。そのことが遺族をさらに苦しめていたのではないのか-。そんな釈然としない思いも残った。

過剰な非難

判決公判から3カ月がたった12月中旬、事故が起きた現場に赴いた。今も交通量が多い交差点のすぐそばに、豊島区が設置した慰霊碑がある。花束や飲み物が置かれる慰霊碑の前で50代くらいの男性が1人、手を合わせていた。

近くを通りかかった際に事故のことを思い出し、冥福を祈らずにはいられなかったという。「事故を風化させず、もう被害者を出さない社会になってほしいと願いました」。男性はそう話すと目頭を押さえた。

悲惨な交通事故は今も後を絶たない。この現状を誰もが何とかしたいと考えている。ただ、行き過ぎた正義感からか、ネット上などで飯塚受刑者へのバッシングを正当化する声が少なくなかった点には、違和感を覚えたことも記したい。

加害者を過剰に非難することで何か変わるかといえば、それは「否」だろう。車を運転する人は自分自身が常に加害者になる可能性がある。そのことを決して忘れないことの方が、交通事故を少しでも減らすことにつながると信じる。(太田泰)

  1. 内田理央のおっぱい写真にファン大興奮「一瞬ビビった」「萌え死んだ」

  2. 【ベテラン記者コラム(11)】岡本綾子さんが怒った優勝会見「何もないなら帰るわよ」

  3. NHK朝ドラ「ちむどんどん」青柳家の女中、波子の「披露宴」発言にネット「言うねえ(笑)」「ナイスツッコミ」と大ウケ

  4. 女優・階戸瑠李さん急死にネットも涙…「半沢直樹」で印象的な演技「本当に残念」「これから…と期待していたので…」

  5. 名脇役の斎藤洋介さんが死去 69歳、人知れずがんで闘病