大阪府高石市内の老人ホームで21日、体が徐々に動かせなくなる国指定の難病「ALS(筋萎縮性側索硬化症)」を患った入居者の60代男性が死亡しているのが見つかり、装着していた人工呼吸器のスイッチを何者かが切った形跡のあったことが22日、捜査関係者への取材で分かった。大阪府警は司法解剖で死因を調べるとともに、殺人容疑も視野に捜査を始めた。
捜査関係者などによると、亡くなったのは高石市高師浜の住宅型有料老人ホーム「スーパーコート高石羽衣」に昨年5月から入居するALS患者の吉見英昭さん(62)。21日午前10時55分ごろ、3階個室で医師が死亡を確認し、施設職員が午前11時半ごろに「人工呼吸器の電源が落ちていた」と110番した。
府警によると、21日午前7時10分ごろ、女性介護士が吉見さんの顔色を不審に思い、連絡を受けた看護師が確認すると、呼吸器のスイッチが切れて作動しておらず、吉見さんも意識がなかった。看護師が呼吸器を操作すると正常に作動し、吉見さんも目を開けて意識を回復。ところがその後、看護師が様子を見に行くと容体が急変しており、医師を呼んだが間もなく死亡した。吉見さんは手足を自由に動かせず、アイコンタクトで意思疎通を図っていたという。
施設は3階建てで平成20年11月に開設。居室数98で全て個室となっており、吉見さんを含め計91人が入居していた。20~21日の夜勤は4人態勢で、21日午前7時からは5人が出勤。国指定の難病を患う人でも受け入れるとしている。施設担当者は産経新聞の取材に「警察が捜査中でお答えできない」と話した。
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吉見さんの親族の60代女性は22日、産経新聞の取材に「施設からの連絡で亡くなったことを知った。突然のことで驚いているが、状況を理解できていない」と戸惑いを隠せなかった。
女性によると、吉見さんはALSと診断され、かなり病状が進んで人工呼吸器が必要だった。ただ、「(吉見さんは)病状を悲観することは決してなく、どちらかと言うと明るかった」と振り返った。
ALSは厚生労働省指定の難病で、筋肉を動かす神経が徐々に侵され、手足のしびれや脱力などの症状で始まる。進行すると寝たきりとなって食事や呼吸が困難になり、人工呼吸器による生命維持が必要となるケースが多い。