野球がぜんぶ教えてくれた 田尾安志

「引き際」は人それぞれ

産経ニュース
去就が注目されているサッカー元日本代表の三浦知良=12月21日、大阪府内
去就が注目されているサッカー元日本代表の三浦知良=12月21日、大阪府内

サッカーのJリーグでは54歳の現役最年長、横浜FCの三浦知良選手が来季も現役続行を目指して自主トレーニングに取り組んでいる。「キングカズ」と称されるレジェンドも今季の出場は数試合に留まった。プレー機会を求めて新天地として日本フットボールリーグ(JFL)加盟のチームを選ぶ可能性も浮上しており、その去就は注目を集めている。

50代半ばになってもユニホームを着続けるような人は今後、現れてこないのではないだろうか。体力の衰えにあらがいながら若い選手たちと勝負していく。同じような立場の人は他にはいない。一体どのような心境にあるのか、直接会って本音を聞いてみたい。

第一線で活躍するプロスポーツ選手でも、「引き際」の考え方は人それぞれだ。僕と同じ時代に活躍した名投手、巨人の江川卓は9年目の32歳だった1987年オフに現役を退く決断を下した。最後のシーズン成績は13勝5敗、7完投。ユニホームを脱ぐのはもったいないと感じ、僕は江川の家に電話を入れた。「引退は早い。まだやれるじゃないか」。翻意の気持ちがないか尋ねたところ、江川はこう言った。

「田尾さんはきれいな形でプロ野球に入って、みんなに応援されながらやっているけど、自分は違う。プロ入りの経緯もあり、結果を出せなくなったら、石を投げられるかもしれなかった」。世間の厳しい批判を浴びつつ紆余曲折を経て巨人に入団。球界を揺るがした騒動の当事者としての負い目が引退時期を早めたようだ。

江川のように余力を残して惜しまれながらユニホームを脱ぐ人はごく僅か。ほとんどの選手は所属球団から戦力外通告を受けて現役生活を終えることになるが、その方が迷いようがない分、気持ちは楽だ。三浦選手も獲得に手を挙げてくれるクラブがある限り、引き際の決断は難しいかもしれない。ゴールを決める姿をまだ見たいというファンの期待も理解できる。

それでも、あえて言いたい。僕は三浦選手の「次のステージ」が早く見てみたい。ブラジルやイタリアなどいろんな国でプレーした経験を生かし、指導者としてワールドカップ(W杯)の舞台に立ってほしい。想像するだけでわくわくするストーリーではないだろうか。(野球評論家)

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