全国にある所有者不明土地の活用をめぐり、政府が現行法では広場や公民館などに限られている用途に、防災物資の備蓄倉庫や太陽光発電設備などを追加し、土地使用権の上限期間も10年から20年に延長する案を検討していることが18日、分かった。少子高齢化や相続意識の希薄化などに伴って増加する所有者不明土地を、防災や環境といった新たなニーズに生かしたい考え。来年の通常国会で関連法の改正案提出を目指す。
所有者不明土地をめぐっては、土地の円滑な活用を目指して制定された所有者不明土地法により、都道府県知事が地域の公益に寄与すると認めた事業について最長10年間にわたり活用することが可能となった。
国土交通省によると、対象となる事業は現在、公園や緑地、駐車場などのほか、公共事業以外でも直売所や教養文化施設といった地域住民の福祉や利便の増進に資するものに限定されている。
ただ、近年の自然災害の激甚化・頻発化で地域から防災物資の備蓄や非常用電源確保のための施設整備などを求める声が上がっているほか、再生可能エネルギーの主力電源化方針など社会経済情勢の変化に対応する必要性を踏まえ、対象事業の拡大に乗り出す。
検討案では新たに「備蓄倉庫など災害対策に関する施設の整備に関する事業」と「地産地消などに資する再生可能エネルギー発電設備の整備に関する事業」を追加するとしている。
一方、土地使用権の上限期間について、現行法は一律10年間としている。これについて、活用する側の民間事業者からは「期間が短くて資金調達上のネックになる」「費用対効果が小さい」などの指摘が上がっており、政府は上限期間の20年への延長も検討する。
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■所有者不明土地 登記簿などを参照しても所有者がただちに判明しない、判明しても所有者に連絡がつかない土地。一般財団法人国土計画協会の所有者不明土地問題研究会が平成29年にまとめた調査結果によると、全国の所有者不明土地は28年時点で総面積が九州本島を上回る計410万ヘクタールに上った。令和22(2040)年には北海道本島に迫る水準の約720万ヘクタールに拡大する可能性を指摘している。