北朝鮮による拉致被害者の奪還へ向けて、政府などが主催する「拉致問題を考える国民のつどいin兵庫・神戸」が18日、神戸市中央区の兵庫県公館で開かれた。拉致被害者、有本恵子さん(61)=拉致当時(23)=の父、明弘さん(93)=同市長田区=は昨年2月に94歳で亡くなった妻、嘉代子さんに思いをはせ、「家内の分まで生きてこの結末を見届けたい」と解決に向けた決意を述べた。
明弘さんは集まった大勢の参加者を前に「家内と知り合ってから70年間、夫婦ともによく働き、子供に恵まれた。家内は亡くなる前に『ホンマにお世話になりました。ええ人生やった。唯一の心残りは恵子のことや』と言っていた」と紹介した。
拉致問題の解決の糸口が見えない中、「(自身も)人生の晩年だと思っている。ただ『助けてください』と言うのではなく、どうすればこの問題が解決するのか訴えていく」と強調。その上で恵子さんに対し「助け出すまでもうちょっと待っとけ。いつまで生きられるか分からないが、家内の分まで生きてこの結末を見届ける」と呼びかけた。
この日は松野博一官房長官や拉致被害者、横田めぐみさん(57)=拉致当時(13)=の弟で拉致被害者家族会の事務局次長を務める横田哲也さん、特定失踪者家族会副会長の吉見美保さんらも出席。終了後、哲也さんらは報道陣の取材に応じた。
哲也さんはこの日未明に急逝した家族会前代表の飯塚繁雄さんについて「残念の一言。親世代が全員倒れてから(被害者が)全員帰ってきても誰も喜ばない。有本さんのお父さんが、そして私の母が生きているうちに返してほしい」と述べた。吉見さんは「これから親世代だけでなく、兄弟も亡くなる時代が来る。一日も早く救出できるよう政府には本当にお願いしたい」。明弘さんは「仲間が1人減って寂しい」とうつむいた。