燕柱(えんばしら)になる-。ヤクルト・奥川恭伸投手(20)が17日、東京・北青山の球団事務所で契約更改交渉に臨み、2000万円増の年俸3600万円でサインした。球団の高卒3年目投手の年俸としては2010年の由規投手の2600万円を抜き、史上最高額。今季は9勝4敗、防御率3・26でクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ、日本シリーズでは〝開幕投手〟を務めた。2年連続の日本一を目指す来季へ、「開幕投手」と「規定投球回(143回)」に心を燃やす。
初の昇給に照れ笑いを浮かべた。今季急成長を遂げ、エースの階段を上った奥川は2000万円増の年俸3600万円で更改。3月25日の阪神との開幕戦(京セラ)で、自身初となる開幕投手に名乗りを上げた。
「評価していただき、本当に感謝しています。来季の開幕にしっかり合わせて練習している。そこ(開幕投手)はもちろん目指したい場所ではあります」
視線を鋭くし、言い切った。今季は中9日以上の間隔を空けながら18試合に先発して9勝4敗、防御率3・26。計105回を投げてわずか10四球と球界屈指の制球力を発揮した。シーズン中盤以降は安定感が増し後半戦、CSファイナルステージ、日本シリーズの開幕戦を任され、いずれも快投。重圧のかかるマウンドでも力を発揮した。
真の開幕投手へ―。20歳11カ月で開幕投手を務めれば、1990年の内藤尚行(21歳8カ月)を抜いて球団史上最年少となる(66年のドラフト制以降)。「(開幕投手は)シーズンが始まって最初にマウンドに上がる投手。先発投手は皆、そこを目指している。自分もその舞台に立てるように頑張りたい」。チームを代表して上がる特別なマウンド。「3・25」を目指し、既に2軍施設などでトレーニングを再開している。
成長モデルの指針ともなった。今季は球団の方針もあり、中9日以上の間隔を空けての先発が続いた。次戦への調整に加え、来季以降へ向けたトレーニングを継続してきた。「もちろん(もっと)投げたい気持ちもあったけど、大切にしてもらった。気持ちが先走ってしまうタイプですが、セーブをかけてもらった。球団には感謝の気持ちでいっぱいです」。イニング数こそ伸びなかったが、今後への道標となった。
3年目に向けて高津監督は「来年とか、再来年は年間25-28試合に先発してほしい」と話している。今季、沢村賞に輝いたオリックス・山本は26試合に先発。来季は中6日を解禁する見込みだ。奥川は「規定投球回を目指せたらいい」と今季の投手陣は未到達だった〝柱〟としての最低ラインも目標に掲げた。「来季は間隔をもう少し詰めて『量』の部分でもチームに貢献できるようにしたい」。燕柱として、来季は『質』と『量』を追い求める。(横山尚杜)
★チーム内バトル 来季高卒3年目の奥川が開幕投手に起用されれば、球団史上初となる(ドラフト制以降)。高卒3年目以内に開幕戦で先発したのは、2015年の大谷(当時日本ハム)を含め10人。勝利投手となったのは2人だけだ。開幕投手について高津監督は「正直、何も考えていません」としており、14日に契約更改した24歳左腕の高橋は「(年下には)負けたくない。開幕投手を目指す」と奥川に〝宣戦布告〟した。今季務めた小川、通算177勝の石川を含め、チーム内の争いを制して開幕戦のマウンドを目指す。