蜷川氏の高齢者劇団が最終公演 演出の杉原邦生氏に聞く

産経ニュース
劇団「さいたまゴールド・シアター」の最終公演の演出を手掛ける杉原邦生氏=さいたま市中央区(兼松康撮影)
劇団「さいたまゴールド・シアター」の最終公演の演出を手掛ける杉原邦生氏=さいたま市中央区(兼松康撮影)

演出家の故・蜷川幸雄氏が結成した55歳以上の高齢者による劇団「さいたまゴールド・シアター」の最終公演「水の駅」が19日、彩の国さいたま芸術劇場(さいたま市中央区)で開幕する。15年以上に及ぶ活動で海外からも注目を集めてきたが、劇団員の高齢化などを背景に活動終了が決まった。最後の舞台にかける思いを、演出を手掛ける杉原邦生氏(39)に聞いた。

劇団は平成18年、演劇経験のない高齢者による劇団で世界へ打って出ようという蜷川氏の構想のもとに発足した。

劇団員の平均年齢は、結成当初の66・7歳に対し現在は81歳超。高齢化に加え、新型コロナウイルスの感染拡大を背景に公演や稽古を予定通り進めにくくなったことも活動終了の決断を後押しした。

「日本はもちろん、世界を見渡してもこうした劇団はなかった」

杉原氏はゴールド・シアターの歩みに注目し続けてきた演劇人の一人だ。2013年のパリ公演も現地で見た。

蜷川氏に心酔して演出家を志したという杉原氏は「演劇が社会に対してどういう力を持ち、可能性を見いだせるかを蜷川さんは常に考えていた。『高齢者劇団』は社会への意思表示だろうとみてきた」と語る。

実際にゴールド・シアターとかかわったのは今回の公演がほぼ初めてだった。

個性の強そうな劇団員たちが芝居で勝負している姿に「まるで『高齢者ヤンキー集団』だ」と感じていたが、接してみて抱いた印象は「チャーミング」だった。

「俳優と一般の人との合間というか…。独特の存在感がある」

自身の祖父母に当たる年齢層の団員たちからは「先生」「邦生さん」「邦生君」と呼ばれ親しまれている。

最終公演の演目の「水の駅」は劇作家で演出家の故・太田省吾氏による沈黙劇だ。舞台中央にある取っ手が壊れた水道へ足を運び、水に触れ、やがてどこかへ去っていく―。そんな人々の姿を一切のせりふを排して表現する。

太田氏の教え子でもある杉原氏は「今の時代の『乾き』のようなものを高齢の俳優が表現することで、年月や歴史がにじみ出て、違った厚みが出てくるのではないか」と期待を寄せる。

「水の駅」の公演での演出担当の打診は数年前から受けていたが、最終公演の演目になるとは思っていなかった。

「蜷川さんのもとで学んだわけでもない自分でいいのか」という葛藤もあったが「劇団の歴史を次につなげる意味で、僕の世代をかかわらせることが一つのステップになる」と考えるようになったという。

「劇団の歴史、蜷川さんの歴史、俳優一人一人の歴史を感じてもらえれば。26日の千秋楽に、観客として舞台を見るのがとても楽しみ」

高齢者劇団とともに作り上げてきた舞台への自信が垣間見えた。(兼松康)

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