認知症超え認め合う社会を 長谷川医師しのぶ声やまず

産経ニュース
なじみの喫茶店前でほほえむ長谷川和夫さん。認知症になった後も、地域や人とのつながりを大切にしていた(南高まりさん提供)
なじみの喫茶店前でほほえむ長谷川和夫さん。認知症になった後も、地域や人とのつながりを大切にしていた(南高まりさん提供)

認知症医療の最前線で活躍し、平成29年に自らが認知症になったことを公表した医師の長谷川和夫さんが11月、老衰のため92歳で死去した。数日前まで家族との会話にうなずき、ほほえむように旅立ったという長谷川さん。認知症になった姿を隠すことなく「認知症になった自分とそうでなかった自分には連続性がある」と発信を続けた。遺族の協力で開設された「長谷川和夫先生を偲(しの)ぶ」と題した特設サイトには、追悼のメッセージが次々と寄せられている。

追悼のメッセージ

「『一人一人が尊い存在なんだ。尊いんだ。』長谷川先生のお言葉は誰にでも勇気と希望を与えてくださいます」「介護は感性、そう教えられた」…。

情報サイト「認知症フォーラムドットコム」の特設ページには、その人らしさを尊重して介護する「パーソンセンタードケア」を提唱した長谷川さんのあたたかな人柄をしのぶメッセージが並ぶ。

長谷川さんは昭和49年、認知症を鑑別する検査法「長谷川式簡易知能評価スケール(長谷川式認知症スケール)」を開発するなど、認知症医療の第一人者として知られた。平成16年に京都市で開かれた国際アルツハイマー病協会国際会議では組織委員長を務め、侮蔑的な「痴呆(ちほう)」から「認知症」への呼称変更にも尽力した。

長谷川さんが顧問を務めた公益社団法人「認知症の人と家族の会」の元代表理事、高見国生さん(78)は「著名な専門家なのに、謙虚で庶民的。家族の会が国際アルツハイマー病協会に加盟するようアドバイスをくれたのは長谷川先生だった」と振り返る。

葛藤超え思い発信

29年10月、長谷川さんは自身が認知症であることを公表した。その前から講演中に自分が何を話すべきか分からなくなったり、道に迷って焦って転倒し、骨折したりしていたという。そんな晩年を支えたのが長女、南高(みなみたか)まりさん(59)だった。

周囲からは講演などはやめたほうがいいといわれることもあったが、長谷川さんは「自分のできる範囲で、人の役に立つことをしたい」との意志が固く、南高さんが講演や取材に付き添った。父の尊厳を保てないのではとの葛藤もあったが、やがて「今だからこそ発信できる言葉を伝えてほしい」と考えが変わったという。

「人との関わり方の見当が、うまくつかなくなってくる」と南高さんにもどかしさを吐露することもあった。それでも長谷川さんはあきらめず、新型コロナウイルス禍でも、動画で介護家族に応援メッセージを送ったり、著書を出版したりと発信を続けた。

南高さんは亡くなる数日前に長谷川さんを見舞い、思わず「楽しかったねー!」と声をかけて抱きしめたという。長谷川さんは涙ぐみ「うんうん」とうなずいた。「父は『自分の生きていく土台は、人との絆だ』といつも言っていた。人との楽しかった思い出がたくさんあり、亡くなる直前まで私や母と心を通わせていました」。南高さんはそう話す。

町ぐるみで支え合い

長谷川さんはかねて、認知症の人を地域の人たちがあたたかく支える、そんなまちづくりが必要だと訴えていた。認知症になると自信や気力を失い、引きこもりがちになるケースもある。だが長谷川さんは地域の喫茶店や理髪店に通い、人とつながり続ける姿勢を貫いた。

喫茶店の店主は長谷川さんが転ばないよう、段差に気を配ってくれた。長く歩くことが難しくなると、理髪店の主人が車いすをおして送迎し、あたたかな会話で長谷川さんをリラックスさせてくれたという。南高さんは「人との触れ合いに支えられていた」と振り返る。

元NHK福祉ネットワークキャスターで福祉ジャーナリストの町永俊雄さん(74)は長谷川さんを「認知症を超えて、『みんな認め合おう』とのメッセージを出し続けた人」と評する。「弱さを分かち合うことで、社会は強く豊かになる。コロナ禍で人とのつながりのもろさが明らかになった今こそ、そんな長谷川先生の姿勢に学び、若い人に伝えなければならない」と力を込めた。(加納裕子)

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