秋の終わりに、山の会の先輩たちとハイキング。短くても多少登りごたえがあって、何かお楽しみがあるといい。向かった先は西丹沢、畦ケ丸(あぜがまる)。関東地方のハイカーに人気の高い丹沢山塊だが、交通の便がよくて多くの人で賑わうのは東丹沢。公共交通機関利用では登山口までバスで長距離移動しなければならない山深い西丹沢は、静かな山歩きの楽しめる山域だ。
西丹沢ビジターセンターから山頂に向かった。沢沿いの登山道の途中に、ふたつの大きな滝がある。歩き始めて1時間弱のところにあるのが下棚(しもんたな)、そこからさらに20分ほど登ったところに本棚(ほんだな)。いずれも、登山道から少し入ったところに滝がある。下棚は落差40メートル、本棚は60メートル。どちらも岩肌を滑り落ちるように流れる滝だ。滝壺の近くまで寄ることができ、ひんやりとした空気とともに細かい水しぶきが舞っている。沢登りでこの滝を登る人もいる。見ていても登れるような気が全くしないのだが、先輩方は真下から滝を見上げて「登るならこのラインかな」などと呟いている。
本棚を過ぎ、登山道が沢から離れていくと、登りがどんどんきつくなっていく。見晴らしのない樹林をぐいぐい登り、「善六ノタワ」(地名)で尾根に出ると、葉を落とした木々の間から周りの山々が眺められた。葉が茂っている時期には見られない、周りの山並みが見渡せるのも、晩秋から冬の楽しみだ。地面が落葉した赤や黄色の葉で覆われているのが美しい…が、歩くと滑りやすいので要注意でもある。
木々に覆われた山頂で記念撮影をし、少し進むと避難小屋がある。2020年に建て替えられた新しい避難小屋だ。せっかくなので中でゆっくりさせてもらう。大きなガラス窓から柔らかな日差しが入ってくる小屋の中は居心地が抜群によい。できれば長居したいところだが、帰りのバスの時間も気になるので、早々に撤収。次に来るときは、避難小屋を利用しながらのんびり縦走を楽しみたい。見えているあの稜線(りょうせん)もこの稜線も、つないで歩いたらきっと苦しくも楽しいに違いない。