この新内裏の北には平清盛邸のほか、平家の有力者の屋敷があった。当時の史料では、清盛邸の1町(109メートル)ほどの地点に湯屋(温泉)があったことが書かれている。この地域には湊山温泉が今も営業しているので史料にいう湯屋はこのあたりである可能性が高いと推測されていた。今年の夏もこの温泉でゆっくり汗を流したのだ。この近くにある祇園神社には中学生の野球部のランニングでよく走りに来た。神社の境内で缶蹴りをして遊んだことを今でも思い出す。
今回の企画展では、「福原京」に関する記念講演会や、学芸員と巡る「福原京」ウォークという催しも開かれた。申し込んだがいずれも抽選で外れてしまった。私と同様に興味を持っている人は少なくないのだ。地元の歴史を学びながら歩き回ってみるのも楽しいかもしれない。
■楠木新(くすのき・あらた) 1979年、京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。50歳から勤務と並行して取材、執筆に取り組む。2015年3月、定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。人事・キャリアコンサルタント。25万部を超えるベストセラーになった『定年後』(中公新書)など著書多数。21年5月に『定年後の居場所』(朝日新書)を出版。