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輪島功一(11)世界挑戦「耳にかじりついても勝つ」

産経ニュース
星野哲雄選手を5回KOで下し日本J・ミドル級タイトルの2度目の防衛を果たす。この試合には交際中だった妻の滝代さんを初めて招いた =昭和45年9月10日、東京・後楽園ホール
星野哲雄選手を5回KOで下し日本J・ミドル級タイトルの2度目の防衛を果たす。この試合には交際中だった妻の滝代さんを初めて招いた =昭和45年9月10日、東京・後楽園ホール

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《2階級下の世界王者にノンタイトル戦で挑んだものの、1回KO負けを喫してデビュー以来の連勝も12でストップ。自身が持つ日本J・ミドル級タイトルの初防衛戦は進退を懸けた一戦となった》


痛恨の初黒星から1カ月半しかたっていない昭和44年12月18日、東京・後楽園ホールで選手生命を懸けた初防衛戦を迎えました。26歳という年齢を考えれば、連敗したら引退もやむなしと覚悟を決めていました。

挑戦者はタートル岡部選手。後にミドル級とJ・ミドル級の日本タイトル2階級を制覇する選手ですが、名前(タートル=亀)の通り、タフで辛抱強く、7回KOで仕留めることができたときは正直、ホッとしました。

45年2月5日の2度目の防衛戦では不覚を取ってしまいました。挑戦者は横田基地に勤務する在日米軍兵士のジョージ・カーター選手で、身長が私より18センチ高い189センチもあった。パンチ力はなかったのですが、遠くからいいようにジャブを当てられ、判定負け。ただ、私が世界戦以外で負けたのはこの2敗目が最後で、2カ月後のリターンマッチでは日本王座を奪還し、現役を続ける意味は世界タイトル挑戦のみとなりました。


《世界タイトルに挑戦するには、まず世界ランカーになる必要があった》


日本王者に復帰後もハイペースで試合を重ね、翌46年1月までに4回防衛しましたが、J・ミドル級では日本選手相手に勝ち続けても、世界挑戦に必要な10位以内の世界ランカーにはなれなかった。ただ当時、日本に1人だけ、このクラスの世界ランカーがいたのです。関西で絶大な人気があった同級東洋王者の金沢英雄選手です。

私が所属する三迫ジムの三迫仁志会長は、金沢選手側に私との対戦を持ちかけました。しかし、この対戦は私の側には勝って世界ランカーになるという目的がありましたが、金沢選手の側はメリットはなかった。交渉は難航し、最終的に三迫会長は「ノンタイトル戦とし、ファイトマネーはすべて金沢選手側に渡す」という条件を示し、試合は実現しました。

東洋王者対日本王者の金沢選手との一戦は、46年2月18日に大阪府立体育会館で行われ、金沢選手への大声援は逆に私を燃え立たせました。私は激しいパンチを何発も金沢選手の顔面にたたき込み、結果は2回1分45秒でのKO勝ち。試合後、私は世界J・ミドル級4位にランクされ、ついに世界タイトルへの挑戦資格を得ました。


《当時、J・ミドル級に君臨していたのはWBA・WBC統一世界王者のカルメロ・ボッシ選手だった》


同年5月末に私が日本タイトルの5度目の防衛を果たすと、三迫会長は私の世界挑戦を実現させるために、単身でボッシ選手がいるイタリアのローマに飛びました。

「輪島、決まったぞ! ボッシに挑戦だ」。この吉報を会長から国際電話で受けたのは6月半ばでした。試合の開催地は日本で、主審の選任権はボッシ選手側が持ち、ファイトマネーはボッシ選手が7万ドル(1ドル=360円時代で2520万円)、私が0円と告げられました。金沢戦に続いてノーファイトマネーとなりましたが、交渉をまとめるために会長が全力を尽くしてくれた結果だと納得しました。

6月18日、帰国する三迫会長を羽田空港まで迎えに行った私は、到着ゲートから出てきた会長に「耳にかじりついても勝ちます」と誓いました。いっしょに迎えにきていた同僚の門田新一選手(当時、東洋ライト級王者)に「それをいうなら『石にかじりついても』でしょう」とからかわれ、3人で大笑いしましたが、「耳にかじりついても」は、あのときの私の偽らざる心情でした。(聞き手 佐渡勝美)

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