変わるラジオ㊦

ネットに増殖の音声メディア、ラジオと「耳時間」争奪戦

産経ニュース

かつてラジオの独壇場だった音声トーク番組が、インターネット上に急増している。スマートフォンなどの普及で文字や映像を見ることに使う視覚の「可処分時間」はすでに飽和状態だが、ながら聞きできる時間はまだまだ長い。今年はじめにブームとなった音声SNS(会員制交流サイト)のクラブハウスも象徴的な存在だ。ラジオだけではない、新しいメディアも登場して耳時間の争奪戦が激しさを増している。

月収200万円も

「きょうは、メルカリでお部屋は片付かないよー、というお話でございます」

あやじま=本名、飯島彩香(あやか)=さんのゆったりとした声がスマートフォンから流れる。ネット上で音声配信する「Voicy」(ボイシー、東京都)のアプリで聞ける「あやじまの身軽になれるラジオ」。なるべくモノを持たずに暮らすミニマルライフについて約4年前からブログや動画で発信してきた飯島さんは、昨夏から音声での発信も始めた。この日はモノを売買するアプリ「メルカリ」を話題にした。

「音声は情報より人間味を伝える感じです。日常のなかでのささいな気づきを話したり、子供の声が入ったりしても楽しんでくれる。編集はほぼゼロ。ありのまま発信しています」

ボイシーでは、芸人の西野亮廣(あきひろ)さんら著名人をはじめ1000人以上のパーソナリティーが番組を持っている。パーソナリティーになるには審査があり、月々の応募数は800人前後。合格率2~5%という厳しい審査をくぐれば、アクセス次第でスポンサーがつき、有料版も開設できる。月収200万円以上のパーソナリティーも現れた。

競争激化の音声配信

ボイシーの創業者、緒方憲太郎・代表取締役最高経営責任者(CEO)は「情報があふれ、フェイクニュースも多い時代には、信頼できる人から情報を聞きたい。声は感情を動かす、時代に合ったメディアです」と話す。

音声プラットフォーム「ボイシー」の緒方憲太郎CEO

ワイヤレスイヤホンや声で応答するスマートスピーカーなど関連機器の普及も音声メディアの浸透を促した。「声でネット検索することが当たり前の子供も現れた今、スマホの画面に頼る時代は長く続かないでしょう。定説が変わるパラダイムシフトが起きている」

グローバル企業も音声市場に力を入れる。世界で3億8千万人以上が利用するスウェーデンの音楽配信サービス、Spotify(スポティファイ)は、ネット上で音声番組などを配信する「ポッドキャスト」を利用した番組配信を強化。番組制作者を育てるプログラムを始め、コンテンツの充実を図る。

新型コロナウイルス感染拡大で在宅時間が増えたことで、ポッドキャストの利用者は確実に増えているという。今年はじめに起きたクラブハウスの爆発的ブームも音声への関心を促す要因になった。スポティファイジャパンで音声コンテンツ事業を統括する西ちえこさんは「1、2年前は『耳』は空いていると言われていたが、いまは果たしてどうかと思うくらい。競争は激化しています」と話す。

共存共栄なるか

ボイシーや、音楽配信に加え音声番組にも力を入れるスポティファイ、また、クラブハウスといった新しい音声メディアについて、既存のラジオ局はどう見ているのか。

「最近、ラジオを見た(・・)のは…」

Kiss FM KOBE(兵庫エフエム放送)の片平享伸(たかのぶ)・編成・事業部長がアルバイトの面接をしたときのことだ。こう話す10代、20代が数人いた。「彼らにとってラジオはスマホやパソコンでアクセスするもので、SNSやネットコンテンツと違いがないと痛感させられた」と驚く。

「音声メディアの特性をラジオが取り入れることで、新たな可能性が生まれるかもしれない」という期待も抱くが、「今ある音声メディアは仲間同士やコアな趣味を持つ人同士のつながりを重視するメディアで、ラジオとは全く別物」と指摘する。

α-STATION(FM京都)の堀秀和・編成制作部長も「ラジオ放送は、芸術性と記録性、社会性の3つを有する」とその矜持(きょうじ)を示す。電波を通じてより多くのリスナーに情報を届けられることも特性だ。「多くのリスナーが他のリスナーの思いや考えを共有できるのはラジオならではの魅力」と強調する。

一方で、緒方氏はこう話す。「ラジオにはまだまだ伸びてもらい、僕たちのようなプラットフォーム(基盤)に番組を提供してほしい。ボイシーの聴取者には海外在住の日本人も多い。ラジオとともに音声市場を盛り上げていきたいと考えています」

耳の時間を奪い合う新しい時代に、既存ラジオ局と新しいメディアは共存共栄できると信じている。(坂本英彰、岡田敏一)

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