米方針、露「ハイブリッド戦」には効果薄

産経ニュース
バイデン米大統領(ゲッティ=共同)
バイデン米大統領(ゲッティ=共同)

【ワシントン=大内清】米露首脳会談は、ウクライナへの威圧を強めるロシアへの刺激を避け、欧州諸国と足並みをそろえることに汲々とするバイデン政権の性格が色濃く表れたものとなった。「露側が軍事侵攻に踏み切った場合は強力な経済制裁を発動する」との言明は、裏を返せば「軍事侵攻以外の方法での浸透は黙認する」とのメッセージと受け取られかねず、プーチン露政権が推し進める「ハイブリッド戦」を抑止する効果は期待しにくい。

米側ではこのところ、対露制裁案の一つとして、露産天然ガスをドイツに輸送する海底パイプライン「ノルドストリーム2」の稼働阻止が浮上している。バイデン政権が、輸入側のドイツに配慮する形で建設を容認していたが、サリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は7日、ロシアがノルドストリーム2を稼働させたいなら、「ウクライナ侵攻のリスクを冒したいとは思わないだろう」と述べた。

バイデン政権はほかにも、ロシアを国際的な銀行決済取引網「SWIFT」(国際銀行間通信協会、本部ベルギー)から排除する案も検討しているとされる。これらの制裁が実際に発動されれば、政府歳入の約4割を資源輸出に依存するロシアへ長期的に損害を与える強力な措置となることは間違いない。

しかし、ロシアはすでにウクライナに対し、親露派武装勢力などを通じた非正規戦やサイバー攻撃、世論操作や攪乱(かくらん)を狙った情報戦を駆使したハイブリッド戦略を展開している。制裁圧力で正規軍による侵攻を思いとどまらせることができても、ウクライナを勢力圏下に置こうとする工作活動を抑止することには直結しない。

そうした中でバイデン政権が今回、制裁発動の〝条件〟を「軍事侵攻」に絞ったのは、当面の緊張緩和を優先したためだ。ノルドストリーム2の稼働に期待するドイツをはじめとして、エネルギー面で対露依存を深める欧州諸国への配慮もあるとみられる。

バイデン政権は、中国との競争をにらみ、ロシアとは安定的な関係の構築を目指すとしているが、その交渉姿勢には野党・共和党を中心に「弱腰」との批判がつきまとっている。