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「絶望」の前に音楽は無力なのだろうか 映画「天才ヴァイオリニストと消えた旋律」

zakzak
映画を彩る名曲の数々が切なく美しい(提供写真)
映画を彩る名曲の数々が切なく美しい(提供写真)

才能あふれる若きヴァイオリニストのデビューコンサート直前に、当の本人が突然姿を消した。ハラハラする幕開けの映画「天才ヴァイオリニストと消えた旋律」(公開中)は、音楽が人と人を紡ぐミステリーだ。

第二次世界大戦下のロンドン。9歳のマーティンの家にポーランド系ユダヤ人で、同い年の天才ヴァイオリン少年、ドヴィドルが預けられる。自信家で生意気なドヴィドルだったが、やがてナチスドイツがポーランドに侵攻したニュースを聞き、家族の写真を見ながら涙を流す。励ますマーティンに心を開いて、固い友情で結ばれた。

21歳になったドヴィドルはデビュー公演の開演直前、何も言わず姿を消す。物心両面でサポートしてきたマーティン一家は痛手を被った。

あれから35年後、マーティンは、ある手がかりをきっかけに、ドヴィドルの軌跡を追い始める。ワルシャワ、ニューヨーク…と幻影のような旋律が行き着く先には、思わぬ真実が待っていた。

大人になったマーティンを演じるのはティム・ロス。兄弟同然に育ったドヴィドルの失踪が理解できず、心配と怒りが入り交じった感情を押し込めた演技が光る。若い頃の映像が謎解きのヒントとして、たびたびフラッシュバックする。映画に登場するパガニーニやブルッフの名曲は世界的名手のレイ・チェンが吹き替え、極上の響き。人生の絶望を前にしたとき、音楽は無力なのだろうか。その答えが突きつけられるラストに注目。 (中本裕己)